CINEMA DISCOVERIES

Profile

中村祐太郎

1990年生まれ、東京都大田区出身。
多摩美術大学映像演劇学科卒。
『ぽんぽん』(13)『雲の屑』(15)の両作品共に東京学生映画祭でグランプリを獲得する。
第29回東京国際映画祭に出品された『太陽を掴め』(16)で劇場長編デビュー。翌年『女流闘牌伝 aki -アキ-』(17)で商業映画デビューをする。
町あかりや、スチャダラパーのMVを制作し、役者としても、近年では片山慎三監督の『岬の兄妹』等に出演している。

 

Filmography

〇ぽんぽん(2013/40min)
 ・第25回東京学生映画祭 実写部門 グランプリ
 ・第17回水戸短編映像祭 審査員奨励賞
 ・第14回TAMA NEW WAVEある視点 入選
 ・第16回京都国際学生映画祭 審査員特別賞

〇すべてはALL-NIGHT(2013/33min)

〇MOOSIC LAB 2014/あんこまん (2014/70min)

〇雲の屑(2015/92min)
 ・第27回東京学生映画祭 グランプリ 観客賞

〇アーリーサマー (2016/53min)

〇太陽を掴め (2016/89min)

〇女流闘牌伝 aki -アキ- (2017/85min)

〇おかしなふたり (2018/18min)

〇若さと馬鹿さ (2019/61min)

 

Close Up
監督の魅力に迫るQ&A

Q. 映画制作をはじめたきっかけは?

大学に入って、馬鹿にされ続けていて、見返したくて・・・(笑)

Q.影響を受けた作品、監督は?

(受けたというより、えらく感銘した作品)
キム・ギドク 「春夏秋冬そして春」
山田洋次 「学校」
黒木和雄 「祭りの準備」
スタンリー・キューブリック「アイズワイドシャット」
ジェリー・シャッツバーグ 「スケアクロウ」

Q.注目している監督は?

山戸結希 西川美和 Wにのみや

Q.関心のあるテーマは?

人間関係の根本に迫ることがテーマです。

Q.映画制作の過程で、チャレンジングと感じることは?

チャレンジングの連続です。

Q.得意なジャンルは?

まだ分かりません。

Q.監督業の面白さは?

自己を一番発揮できることです。

Q.映画づくりでこだわっていることは?

画作り、だらしのない芝居をさせないこと。

Q.映画とは?

湧き上がる活力と自己の認識。

Q.インディペンデントという領域の魅力は?

好きなだけお庭制作出来ること。

Q.一緒に仕事をしたい役者は?

武田鉄矢さん 萩原聖人さん

Q.死ぬ前に映画を一本見るとしたら、何を選びますか?

まだ決められません。

Q.映画を見る時に、何を期待しますか?

躍動させてくれるか。

Q.1年に一度だったり、数年に一度など定期的に必ず見る映画は?

決めかねます。

Q.好きな食べ物は?

ありすぎて困っちゃいます。

Q.愛読書は?

僕は漫画が好きなので(と言っても、詳しい訳ではないです)
週刊青年漫画雑誌です。

Q.邦洋問わず、お気に入りのスターは?

Q.居心地の良い場所はどこですか?

自宅のソファーベッドです。

Q.インディペンデント映画を扱った動画配信サービスに寄せる期待

インディペンデントに特化しているのが、面白いです。
月額見放題というのも、潔くて分かりやすいです。
若い作品、若かった作品。沢山の作品を見れるようになれば、
とても価値のあるサービスだと思います。

 

Interview

インタビュー・テキスト:折田侑駿

映画は観る者に“開き直り”を与えてくれる

映画制作のきっかけと、出会いによって変わる心境

──多摩美術大学映像演劇学科卒ということですが、映画制作を始めたきっかけは何ですか?

映像を勉強してみたくて多摩美の映像演劇学科に入りました。かなり自由なところなので、「ここでやっていこう」と。でも大学生時代は、自分を過信してしまうところもあって……そんな中で本当に自由にやっていたんです。1年生の頃は「面白い観点を持っている」なんて言っていただいていましたが、人間性の部分に関してはあまり評価してもらえなくて。

──(笑)。

結局、大学でも、人間性や社会性を見られるじゃないですか。僕にはその部分が欠けていて、信頼してもらうことができなかった。プレゼンのときに時間をもらえなくなったり。僕自身がいい加減で、相手の気持ちに立ってものを考えることができていなかったんです。そこで、「もっとちゃんとできるんだぞ」と、見返したい気持ちが芽生えてきた頃に、ちょうど青山真治監督が多摩美にやってきました。そこで本格的に映像制作の道に進んで、「俺はタダモンじゃないぞ」ということを証明したいなと思ったんです。

──ある種の“気づき”ですね。

そうです。そこでやっぱり一人では難しいし、その後タッグを組んでいくことになる脚本家の木村暉くんが人間関係を築くのが上手かったので、人気者を味方につけようと。無理矢理誘い、“中村組”の誕生です(笑)。本当のきっかけはそこですね。映画に対して本気になったのは。

──そもそもなぜ、多摩美に進学しようと思ったのですか?

もともと映像自体はすごく好きでした。僕は自己推薦で、“製作物三点セット”を提出して合格したのですが、その中に、「旅の映像を撮りなさい」というものがあって。それで僕は一人で広島に行ってみて、“旅先での気づき”や“孤独さ”みたいなものを、映像に収めました。今でいうユーチューバーみたいな感じです。それがすごく褒められたんですよ。「すごく素直だね。観ていて楽しかったよ」と。そこから“映像の力”というものを勉強していきたいと思うようになりましたね。

──映像演劇学科の中で映像の方に進んだのは、やはり青山監督の存在が大きいですか?

そうですね。でも1本目の『ぽんぽん』(2012)を撮り終わったあとには、もうやめたいと思っていました。精神的にもすごく疲弊するんです。制作して、学内上映があって、もうそこでお腹いっぱい。もういいかなと。そして、演劇の方にいってみようかと思ったりもしたのですが、東京学生映画祭で『ぽんぽん』が好評をいただきました。その審査員の一人に松江哲明監督がいて、「俺と一緒に映画を作ろうよ」と言ってくださったんです。それがムージックラボで手がけた『あんこまん』(2014)に繋がりました。「中村くんと木村くんは、学生映画ではなかなか描けない、若者の退廃的な姿や性描写を作品に落とし込んでいるから、そこをフィーチャーした作品をもっと観たい」とおっしゃっていました。

──なるほど。

木村くんも、映画を作るのはもうこりごりだと言っていました。でもそんなタイミングで、松江監督や、スポッテッドプロダクションズの直井卓俊さんに出会ったことで変わりましたね。そして地方では、名古屋のシネマスコーレさんが上映してくださったり。これは大きなターニングポイントでした。出会いによる心境の変化です。

自分の可能性を拡げてあげたい

──今現在のことと恒久的なことで、中村監督が興味・関心のあることは何でしょう?

一番面白いなと思うのは、“自分”です。自分の可能性を拡げてあげることや、どうすれば浮上していけるかということをずっと考えていて、それが面白いんです。それこそ最近は自宅にいる時間が多くて本などを読んで過ごしているのですが、そこで気づいたのが、かつてより自分の器が大きくなっているということです。これまで避けていた情報や否定していたものを、前向きに受け止められる。今、自分の本当にやりたいことというのは、“もっと発信したい”ということです。自分の発した言葉に対する、他者のリアクションがすごく見たい。自分の言葉を信じてみたいんです。今までは、自分の発する言葉が「メジャーじゃない」と言われてきました。木村くんの“共感性”に支えられてきましたが、僕自身だけから発された言葉は、メジャーではなかったんです。

──つまり、広く多くの人には届かないと?

そうです。それは自分の作家性という意味においてもコンプレックスになっていました。ここを、30代に突入した今は伸ばす時期だと思うし、やがて40代を迎えて次のステージに入るときに、自分の言葉の重さや表現がどうなっているのか……それをずっと考えていますね。そんな自分の可能性を拡げてあげたいです。

──同世代の人間として、共感できます。

この30代は、これまでに取捨選択をしてきた結果じゃないですか。40代に向けて、さらにそれを続けていかなくちゃいけないと思うんです。そして、“興味・関心”の恒久的な面では、“人”ですかね。人間関係の根本に迫ることです。

──そんな中村監督にとって、映画とは何でしょう?

映画の素晴らしさというのは、“開き直り”を与えてくれることだと思っています。ふさぎ込んでいたり、何か自分を装って見せようとしていた部分が、映画を観ることによって変わりました。自己革命です。声を大にして「映画、ありがとう!」と言いたい。映画によっていろいろな人生を見せられて、触れさせてもらってきました。

──すごく分かります。

日本人っていろんなものが好きですよね。映画を観る行為は、そのいろんなものをミックスできる唯一の時間だと思います。物語の主人公が背負っているものや立ち向かうべきものを見ていると、自分が悩んでいることがいかにチンケなものかを思い知らされます。それが自分の中での革命ですね。映画を観ることは前進しか生まなかったし、人生において素晴らしい教師だと思います。今までも、これからもそうです。

──“開き直り”というのは、自己肯定ということですか?

そうです。みんな全然閉じなくていいし、ふざけたっていい。僕の作品を観て、それを誰かに与えられれば嬉しいですし、映画を観て僕がこんな考えになったように、映画を作り続けることで、多くの方に伝えていきたいです。

映画は“熱情”が大切

──メジャーとインディペンデント、作品づくりにおける違いはどういったところにありますか?

2年前に撮った『スウィート・ビター・キャンディ』という作品がまだ公開できていない状況で、大きめの規模で作る作品というのは、“関係性”や“距離感”が重要で自分本位にはできません。それを今後どうコントロールしていくか、もっと自分自身がやりやすくしていくためにはどうすればいいか、それを常に考えています。

──環境ですね。

はい。それとは逆にインディペンデントは、僕の場合は自主制作なので、すごく気が楽ですね。思ったことをすぐに作品できるというのも利点の一つです。そこが自主映画の面白さです。

──今現在考えていることをメジャーで撮ろうと思ったら、タイムラグが生じてしまう。撮れる頃にはすでに興味の対象外だったりもしますよね。

それもあります。なので、第一線で活躍されている方々って、人間関係や、自分のモチベーションを維持するためのスタイル作りなどがすごく上手いんだと思います。

──中村監督は俳優としても活動していますが、俳優をやること、カメラの前に立つことによって、自身が映画を撮る上での影響はありますか?

俳優の方々の気持ちに寄り添って考えることが多くなりました。それに、俳優部として現場に行くことで、他の監督の“監督姿”というものも知ることができます。そこから学ぶことも多いですね。なので俳優部として呼ばれるときは、勉強しに行くという楽しさもあります。

──感銘を受けた作品として、黒木和雄監督の『祭りの準備』(1975)やジェリー・シャッツバーグ監督の『スケアクロウ』(1973)を挙げていますね。『祭りの準備』は中村監督の作品と繋がるところがあるように思います。

意識はしていないのですが、名画座でATG作品の特集などがあると足を運んでしまいますね。『祭りの準備』に関しては、「映画というものはこれくらいの熱情がなくちゃいけないんだ!」というものを感じるんです。映画は“熱情”が大切で、監督というバケモノが作品に取り憑いている。それを感じられる作品が好きですし、僕もそこを狙いたいです。ただ、最近は自分のことを論理的に、客観的に考えることも増えてきて、当初思っていた“熱情”というもののベクトルが変わってきてもいます。

中村祐太郎監督の作品