CINEMA DISCOVERIES

Profile

塚本晋也

1960年1月1日、東京・渋谷生まれ。
14歳で初めて8ミリカメラを手にする。87年「電柱小僧の冒険」でPFFグランプリ受賞。89年『鉄男』で劇場映画デビューと同時に、ローマ国際ファンタスティック映画祭グランプリ受賞。主な作品に、『東京フィスト』、『バレット・バレエ』、『双生児』、『六月の蛇』、『ヴィタール』、『悪夢探偵』シリーズ、『KOTOKO』、『野火』、『斬、』など。製作、監督、脚本、撮影、照明、美術、編集などすべてに関与して作りあげる作品は、国内、海外で数多くの賞を受賞。北野武監督作「HANA-BI」がグランプリを受賞した97年にはベネチア映画祭で審査員をつとめ、19年に2度目のメインコンペティション審査員としてベネチア映画祭に参加している。俳優としても活躍。監督作のほとんどに出演するほか、他監督の作品にも多く出演。『とらばいゆ』『クロエ』『溺れる人』『殺し屋1』で02年毎日映画コンクール男優助演賞を受賞。『野火』で15年、同コンクールで男優主演賞を受賞。19年に『斬、』で男優助演賞を受賞している。その他に庵野秀明『シン・ゴジラ』、マーティン・スコセッシ監督『沈黙ーサイレンスー』など。他、ナレーターとしての仕事も多い。

Close Up
監督の魅力に迫るQ&A

Q. 映画制作をはじめたきっかけは?

中学2年生のとき。父親が趣味で8ミリカメラを購入。それを横目で見て、あれがあれば映画ができるんだ、と拳を握り締めました。映画を作りたいという夢がその頃始まったのでした。

Q.影響を受けた作品、監督は?

たくさんあります。金字塔は黒沢明監督の作品。映画というものは、どんなに力を注いでも注ぎすぎということはない、ということを教えてもらいました。『七人の侍』など。 『青春の蹉跌』神代辰巳
『タクシードライバー』マーティン・スコセッシ
などなど。

Q.関心のあるテーマは?

最近は、未来の子供たちへの心配が強く、そのテーマからなかなか離れることができません。『KOTOKO』もその思いから作りました。

Q.映画制作の過程で、チャレンジングと感じることは?

初期衝動に突き動かされるとき。テーマ、素材、方法において。ドキドキする未知なるもので“新しい遊び道具”と呼んでいますが、それがないとモチベーションを維持するのは難しいです。

Q.得意なジャンルは?

モヤモヤと形にならない衝動をさまざまなジャンルの形に乗せて表現することに醍醐味を感じています。

Q.監督業の面白さは?

頭の中にしかなかったものが、信頼するスタッフ、キャストと力を合わせ、巨大なスクリーンに具現化できるところ。

Q.映画づくりでこだわっていることは?

自由な表現。

Q.映画とは?

人生そのもの。

Q.インディペンデントという領域の魅力は?

自由性。

Q.一緒に仕事をしたい役者は?

いらっしゃいますが、実現するまでは口にしませんです。

Q.死ぬ前に映画を一本見るとしたら、何を選びますか?

神代辰巳『青春の蹉跌』

Q.映画を見る時に、何を期待しますか?

これまで見たことのないものを観たい。

Q.映画の中のキャラクターとして生きるとしたら、どの映画の誰がいいですか?

『奇跡の人』のヘレン・ケラー。もう一度生まれ直さなければならないことと、異性なので難易度高いです。

Q.1年に一度だったり、数年に一度など定期的に必ず見る映画は?

今村昌平『赤い殺意』
神代辰巳『青春の蹉跌』
マーティン・スコセッシ『タクシー・ドライバー』
リドリー・スコット『ブレード・ランナー』
黒沢明『七人の侍』
市川崑『股旅』

Q.好きな食べ物は?

好き嫌いはありません。昔は夜に一番食べましたが、今は夜は軽くすませます。

Q.趣味は?

映画ばかりの人生ですが、自転車が好きでした。今は昔からの夢、秘密基地遊びをすること。

Q.愛読書は?

時とともに移ります。311のときに本棚から選んで鞄に詰めたのは、堀江謙一『太平洋ひとりぼっち』。バイブルです。

Q.邦洋問わず、お気に入りのスターは?

オールタイムでは、ロバート・デ・ニーロ。ジョディ・フォスター。ジェーン・バーキン。
今はケイト・ウインスレット。

Q.居心地の良い場所はどこですか?

今は車の中。

Q.インディペンデント映画を扱った動画配信サービスに寄せる期待

宣伝期間が短かったり、公開規模が小さい作品が多いので、情報がキャッチしづらい地方の人が興味を持つきっかけになったり、見たことのないタイプの映画に触れる機会になるといいなと思います。

 

Interview

インタビュー・テキスト:伊藤さとり

 

個に届ける思いと社会に届けたい思いの合致が、映画作りを掻き立てる

——塚本晋也監督が、監督になりたいと思ったきっかけは何ですか?

中学校の時に父親が8ミリカメラを買って来て、“あれがあれば映画を撮れるんだ”と思ったんです。渋谷にある全線座という洋画の名画座があったんですが、そこで『男と女』を観た時に、当時の日記に“『男と女』のクロード・ルルーシュ監督みたいに個人映画みたいな感じで映画を撮れないかな”って自分で書いていたんですよね。怪獣映画を観ても“壊すビルを自分で作ってみたいな“とか手作り映画への芽生えがありましたし、きっとそのあたりがきっかけかもしれません。

──影響を受けた監督や作品はありますか?

中学生の時に、ショーケン(萩原健一)さんが好きだったんです。それで『青春の蹉跌』を観に行って、裸の写真がパンフレットにあってドキドキしながら観たら、まぁ本当に素晴らしい映画でいまだに自分の中でベスト1から3の間に入る映画です。その映画で神代辰巳監督のファンになって、高校生になって友達から黒澤明監督を教わって観たら、あまりに素晴らしくって、映画の世界の素晴らしさを知りました。その後、銀座の並木座で日本映画の2本立てを観まくりました。今村昌平監督や市川崑監督、寺山修司監督、ATGまで数々の素晴らしい映画を観ました。ちなみに野上照代さんとときどきお会いするようになり当時の黒澤監督のお話を聞けるのがうれしくて。実は『ヒルコ/妖怪ハンター』を撮った時に東宝撮影所で『八月の狂詩曲』撮影中の黒澤監督を目撃したことがありまして。編集室が隣どうしだったので一目拝みたくて直立して到着を待ったことがあるんです(笑)。

──『KOTOKO』もそうですが、塚本監督の作品には雨が多く登場し、火も印象深いですが、それぞれ監督にとってどんな意味を持つのでしょうか。

“雨”というのは、僕にとっては動物的、本能的なものが覚醒するというイメージなんです。『六月の蛇』なんかは雨が全編振り続け、まさにそれを表しています。火もエモーショナルなんですが、ある時は自然な気持ちにさせてくれます。『野火』での火のイメージは、実際にフィリピンでは焚火をよく見かけるのですが、生活の火であり、同時に戦争の火でもあるという自然なものとエモーショナルなものを両方シンボリックに表現しています。

──塚本監督は、今まで多く海外の映画祭に行かれ、人気も高いですが、海外の映画祭を経験して感じることはありますか?

まずは反応がダイレクトで分かりやすいから安心なんですよね。ローマ国際ファンタスティック映画祭で『鉄男』がグランプリを撮ったあと『鉄男ⅡBODY HAMMER』では作品と一緒に世界中を回るようになりますが、いつも面白いと思ったときは面白い、面白くないと思ったときは面白くない、ととても正直に反応してくれるのでお客さんが何を考えているのかはっきり分かります。そしていったんユニークだと思ってくれたらとても喜んでくれて、その後もそれを作った監督を応援してくれるんですよね。

──塚本監督は、自分の心の声に耳を傾け、オリジナリティを大事に、それを見事に映画化出来ている希少な監督だと思いますが。

映画を撮るにも、自分の好きなことじゃないとモチベーションが続かないんです。基本的に人とコミュニケーションを取るのが上手い方ではないですし、リーダーシップが取れる方でもなく、よほど自分が強いモチベーションを持っているものじゃないと、人とコミュニケーションを取って一つのものを作り上げていく度量も技量もないという感じでしょうかね。自分に強いモチベーションがあって、やらないとどうにもならなくて動いちゃっている作品の時に、皆に協力してもらって自分は引け目を感じずに撮れるというか(笑)。

──とはいえ、オリジナルの脚本で映画を生み出すという、多くの監督が持つ理想像を体現している監督だと思いますが。

何を持って成功をするかは甚だ分からないのですが、全然お金持ちにはならないですしね。でも、自分としては好きなことで大きな満足や達成感を得られ、スタッフやキャストとそれを共有し、お客さんにも喜んでもらうことができて、それを細々とでも続けられているということがあればそれでいいんです。いざ作ろうとする時に“なんで持ち合わせが何もないんだ!”ということが始終あるので、この先は関わってくれる人に経済的な心配をしてもらわないようにできるかも大事な課題になってきますが。

──これから映画を撮ろうとする未来の監督に何かアドバイスするとしたらどんなことでしょうか。

アドバイスなんておこがましいですが、僕自身でいうと『鉄男』を作って海外に持って行ったときに“個”でモチベーションの強いものを作った方が、日本に限らず、海外の“個”に直接刺さると感じました。大勢にフラットに喜ばれるのではなく、少ないニーズだけれど深く刺さる方がいいと『鉄男』を作った時に思ったんです。広く深く喜ばれればもちろん一番いいですが。その思いが基盤にあるので、強く作りたいと思うものが生まれたらそれは消えないので、それが作られる日までずっと揉み続けるという感じです。面白いものって結構、誰でも思い付くんですが、時代との接点があると、今、作んなきゃという焦りにも似た強いモチベーションが生まれますし、同じ考えを持った人はある程度、絶対に居るので、届かせることができると思うんです。だから自分の作りたいものと時代が合わさった時は、早く作ろうとも思えるし、その気持ちは大切にした方がいいと思います。

──塚本監督は俳優もされていて、『沈黙-サイレンス-』ではマーティン・スコセッシ監督とお仕事をされましたが、参考になった演出はありましたか?

マーティン・スコセッシ監督は絶対に俳優を貶さないんですよ。僕も元々、俳優の演技を否定したことはないんですが、スコセッシ監督はどんな時でも“エクセレント!”って大声で言うんです。ワンカット、ワンカット、“エクセレント!”と言い続けながら、あまり指示をすることもなく、何十回もやらせるんです。お陰で監督がオッケーを出す時は、疲労困憊しながらも全てが揃った時と分かるので、監督を信頼出来るんですよね。面白かったのは、もし俳優に何か演技で引き出したい時は、その人に直接言うのではなく、相手の俳優に耳打ちするんです。例えば相手に大きな声で言わせて、こちらのビックリする感情とか悲しくなる感情を引き出させる手法。まさに“演技は関係性で生まれる”というのをマーティン・スコセッシ監督と仕事をして再認識しました。

──過去に海外の映画祭で評論家の方に“都市と自分”というのがテーマなんですね、と言われたと監督の自伝「冒険監督」には書いてありましたが、今はどうでしょうか。

都市に住んでいると“個”を意識してしまい、『鉄男』から『六月の蛇』とかまでは、“都市と自分”というのが映画のテーマだったんでしょうが、子供が生まれ、母親が亡くなり、『KOTOKO』を撮って、『野火』を撮ったりして、世の中の動きとともに次の世代への不安感とか自然についてなど、テーマが変わって来ていますよね。『野火』の時は、自分の子供の世代が心配になったのと、それまでは自分のために映画を作っていたんですが、母親が亡くなり、人のために作んなきゃとちょっと気付いたんですよね(笑)。

──今後、撮ってみたい題材はどんなものでしょうか。

コロナにより、映画のテーマそのものがこれから変わっていかなきゃいけないのかもしれないですね。僕自身、一年半考えていた企画が、コロナのことで宙ぶらりんになり辛いですが、時代への心配が積もり積もって作りたい映画というのがあります。『野火』に続くような映画を準備しているんですがなんとか撮りたいですね。世界もギスギスしていて未来も不安ですから、早く映画を生み出したいんです。

 

Filmography

〇普通サイズの怪人(1986/18min)

〇電柱小僧の冒険(1987年/45min)
 ・88年ぴあフィルムフェスティバルアワード グランプリ

〇鉄男(1989/67min)
 ・89年ローマ国際ファンタスティック映画祭 グランプリ

〇ヒルコ/妖怪ハンター(1991/90min)

〇鉄男II BODY HAMMER(1992/83min)

 ・第7回高崎映画祭 若手監督グランプリ
 ・92年ポルト国際映画祭 審査員特別賞
 ・92年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭 批評家賞 ロバート・ワイズ賞
 ・92年ブリュッセル国際ファンタジー・スリラー・SF映画祭 審査員特別賞
 ・92年タオルミナ国際映画祭 審査員特別賞
 ・92年シッチェス映画祭 審査員特別賞
 ・92年モントリオール・ファンタスティック映画祭 特殊効果賞

〇東京フィスト(1995/87min)
 ・95年サンダンス・フィルム・フェスティバル・イン東京 グランプリ
 ・96年ロカルノ国際映画祭 ヤング審査員特別賞
 ・95年キネマ旬報 第10位
  第10回高崎映画祭 最優秀監督賞

〇バレット・バレエ(1998/87min)
   ・98年スウェーデンファンタジーフィルムフェスティバル グランプリ

〇双生児-GEMINI-(1999/84min)
   ・99年プサン国際映画祭 観客賞
   ・00年ヌシャテル映画祭 グランプリ

〇六月の蛇(2002/77min)
 ・第60回ヴェネツィア国際映画祭 コントロコレンテ部門審査員特別賞受賞
   ・02年ヴェネチア国際映画祭協賛キネマトリックス長編映画部門最優秀作品賞
   ・02年シッチェス国際映画祭 最優秀美術監督賞
   ・03年ポルト国際映画祭 ファンタジー特別賞

〇とかげ(2003/50min)
   ・04年ATP賞のドラマ部門・優秀賞受賞

〇ヴィタール(2004/86min)
 ・第61回ヴェネツィア国際映画祭招待作品
 ・第37回シッチェス・カタロニア国際映画祭 Fantastic Noves Visions部門作品賞
 ・05年ブリュッセル国際映画祭 銀鴉賞(SILVER RAVEN)
   ・第3回アジア太平洋地域諸国国際映画祭(ウラジオストック国際映画祭)審査員特別賞
   ・04年シッチェス国際映画祭 ニュービジョンズ部門最優秀作品賞
   ・第19回高崎映画祭 最優秀作品賞

〇玉虫(2005/22min)
 オムニバス映画「female」の中の1編

〇ヘイズ/HAZE-Original

  Long Version(2005/49min)

〇悪夢探偵(2006/106min)
    ・07年ヒホン映画祭 功労賞受賞
    ・07年Cryptshow映画祭 監督への特別な賞

〇悪夢探偵2(2008/102min)

〇鉄男 THE BULLET MAN(2009/71min)
・第66回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門選出作品
・09年シッチェス・カタロニア国際映画祭 Time Machine Honorary Award
・10年グリーンプラネット・フィルム・アワード “2010年アジア映画で最も期待される映画”

〇妖しき文豪怪談 葉桜と魔笛(2010/36min)

〇KOTOKO(2011/91min)
 ・第68回ベネチア国際映画祭 オリゾンティ部門最高賞(グランプリ)
 ・第3回ゴールデンマウス シルバーマウス大賞
 ・第15回タリン・ブラックナイト映画祭 メインコンペ最高映画表現者賞(エストニア)
 ・第6回トゥールモヴァス映画祭 観客賞
 ・第22回TAMA CINEMA FORUM 第4回TAMA映画賞特別賞

〇野火(2014/87min)
 ・第71回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門選出作品
 ・第70回毎日映画コンクール 監督賞 男優主演賞
 ・第89回キネマ旬報ベスト・テン 日本映画ベスト・テン2位
 ・第25回日本映画プロフェッショナル大賞 監督賞受賞
 ・第30回高崎映画祭 最優秀作品賞
 ・第10回KINOTAYO(キノタヨ)現代日本映画祭 批評家賞・最優秀撮影賞
 ・第7回TAMA映画賞 特別賞

〇斬、(2018/80min)
 ・第75回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門選出作品
 ・第33回高崎映画祭 最優秀作品賞
 ・第73回毎日映画コンクール 男優助演賞
 ・第92回キネマ旬報ベスト・テン 日本映画ベスト・テン第7位
 ・第13回アジア・フィルム・アワード 編集賞
 ・第69回芸術選奨文部科学大臣賞 映画部門

 

 

塚本晋也監督の作品