CINEMA DISCOVERIES

Profile

二宮健

1991 年生まれ、大阪出身。
2015 年に大阪芸術大学の卒業制作作品として発表された 『SLUM-POLIS』が国内外の映画祭で話題を呼び、全国で劇場公開される。2017 年、『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY』で、商業映画デビューを果たす。2019 年、岡崎京子原 作『チワワちゃん』(19)が公開。待機作に『とんかつDJアゲ太郎』(20)。その他の監督作 に『MATSUMOTO TRIBE』(17)『疑惑とダンス』(19)など。映画上映イベント「SHINPA」 主宰。

Information

▼Twitter

https://twitter.com/some_kind_of_w

▼最新作『『とんかつDJアゲ太郎』公式HP

http://wwws.warnerbros.co.jp/agaru-movie-tdajp/
 

Filmography

〇SLUM-POLIS(2015/113min)

〇MATSUMOTO TRIBE(2016/82min)

〇THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY リミット・オブ・スリーピング ビューティ(2017/89min)

〇チワワちゃん(2019/104min)

〇疑惑とダンス(2019/53min)

〇とんかつDJアゲ太郎(2020)

 

Close Up
監督の魅力に迫るQ&A

Q. 映画制作をはじめたきっかけは?

レゴブロックを動かしたくなりました。

Q.影響を受けた作品、監督は?

キャメロン・クロウ監督

Q.注目している監督は?

ジャウム・コレット=セラ監督

Q.映画制作の過程で、チャレンジングと感じることは?

意識的に毎作品、新しいチャレンジを探しています。

Q.監督業の面白さは?

楽しい。

Q.一緒に仕事をしたい役者は?

トム・クルーズ

Q.映画を見る時に、何を期待しますか?

没入感。

Q.映画の中のキャラクターとして生きるとしたら、どの映画の誰がいいですか?

フェリス・ビューラー

Q.1年に一度だったり、数年に一度など定期的に必ず見る映画は?

エリザベスタウン

Q.好きな食べ物は?

舞茸

Q.趣味は?

スクワット

Q.愛読書は?

大栗先生の超弦理論入門: 九次元世界にあった究極の理論

Q.邦洋問わず、お気に入りのスターは?

トム・クルーズ
シアーシャ・ローナン

Q.居心地の良い場所はどこですか?

 

Interview

インタビュー・テキスト:折田侑駿

映像にまつわる原体験と、「SHINPA」の面白さ

映画制作のきっかけは、レゴブロックを撮ったこと

──映画の道に進もうと思ったきっかけは何ですか?

物心がつく頃には「映画監督になる」と言っていました。なので明確に、「この瞬間に映画の道を志した」という記憶はありません。もともとレゴブロックで遊ぶのが好きで、小学生くらいのときに、スティーブン・スピルバーグが監修した、レゴにカメラを取り付けられるシリーズのものが出たんです。これを知ったときに、「うわ、こんなすごいものが出るんだ」と思い、そこから「映画って撮れるんだ」という発想に繋がりました。それで親に買って欲しいと頼んだのですが、そう簡単には手に入らず……それならじゃあ「家のホームビデオを使わせてくれ」と言いました。そのホームビデオでレゴブロックを撮ったというのが、映像を自分で撮り始めたきっかけです。

──“レゴブロックを撮る”……僕もレゴは好きでしたが、その発想はありませんでした。続いて、興味・関心のあるテーマについてお聞きしたいです。

映画制作の合間を縫ってや、それこそ“ステイホーム”の期間中、量子力学の勉強をしています。これは潜在的に、ずっと持ち続けている興味ですね。そして今現在のことに関して言えば、お仕事などは、わりと受け身でもあります。『とんかつDJアゲ太郎』(2020)を監督するお話がきたときも、「このマンガを自分が撮ったらどうなるんだろう?」という興味から動き始めました。

──そうなのですね。『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY -リミット・オブ・スリーピング ビューティ-』(2017/以下『リミスリ』)や『チワワちゃん』(2019)などもそうですが、溢れる音楽と、断片的な映像の激しい交錯など、二宮監督作品の酩酊感を生む演出が印象的です。

自分の演出や作風に関して、何か明確なターニングポイントがあって生まれたわけではなく……。2019年の5月に、自分が15年間で撮ってきた43作品を制作順に連続上映するという、ぶっ飛んだ企画をやらせていただいたのですが(笑)、中学生のときに撮ったものなど、とても人に観せられるようなものじゃない作品もありました(笑)。そういう意味では、観測地点がいっぱいあると思います。中学2年生のときに撮った130分くらいの映画があるのですが、これを“初めて撮った作品”としてその企画ではオープニング作品として上映しました。『ペシミスティック・リベンジ』という作品です(笑)。

──すごいタイトル(笑)。

この作品を観た方の中には、「今の◯◯な部分がこの頃から変わってないよね」みたいな意見もありました。僕は小学生のときからパソコンに触れていたのですが、ロケ地も限られてるし、プロの俳優がいるわけでもない。だから、編集で音楽の使い方を試してみることで自分の表現を試行錯誤していました。音楽に関しては自分の好きな音楽をかけられるわけで、「あ、こうやって映像に音楽を合わせてみたら面白い!」など、そういった発見が映像にまつわる原体験としてあったのかなと、今になって思います。

「インディペンデント映画とは何か?」ということを問い直してみることがもっとあっていい

──二宮監督は営業をかけるなど、ご自身から動く方ですか?

実はやったことないんですよね。でも東京に来たばかりのときは、大学時代に撮った自主映画のDVDを焼いて、何かあったときにすぐに手渡せるようにしようと思って持ち歩いてはいましたし、僕の好きな映画を作ったプロデューサーには「観てください」と送ったりしていました。上京当初は本当に何のツテも無かったので、あ……そういう意味ではやってましたね。「大学時代に作ったこの映画があるから、何とかなる」と思って(笑)。“きっかけづくり”という意味では、自分から働きかけた部分があるかと思います。でも、「この人と、こういう映画を作りたい」という思いはだいたい叶わなくて。その中で生まれた、ふとしたきっかけが繋がっていたりします。映画制作の実現に至る可能性の片隅には、自分からのアクションがあったのかもしれません。

──なるほど。メジャーとインディペンデントで、作品づくりにおける違いはありますか?

うーん…… “メジャーとインディペンデントの定義”みたいな話になると思うのですが、難しいですよね。何だと思いますか?

──そうですね……監督が主体となって作ることができる作品なのか、外部からの要請のもと作る映画なのか……だったりですかね。

じゃあ仮にそうだとして、例えば、ビデオスルー専門のコンテンツを作っているような会社から「500万円の資金で撮ってくれ」と言われて撮ったものと、監督自身が1000万円を貯めて撮ったもの。これの、どっちがメジャーでインディペンデントなのかって判断は難しいですよね。これは今の映画界が直面している問題のひとつで、良く言えばいろんな可能性があると言えるし、悪く言えば誰にでも映画と名乗れるものを撮れてしまう環境になっています。このあたりのことが、問題をすごく曖昧にしていると思います。ただ、今こうやって質問で返しましたが、言わんとしていることは分かります。“インディペンデント”というものをブランドとして大事にするのであれば、「じゃあインディペンデント映画って何なのか?」ということを問い直してみることがもっとあっていいのかなと思います。世界規模で言えば、予算が2億円だろうが3億円だろうが、インディペンデントはインディペンデントだったりもするので。

──たしかにそうですね。作り手と観客とで、捉え方も違うかと思います。

「明確な目的意識がないからこその「SHINPA」の面白さ

──二宮監督がやっている「SHINPA」についてもお聞きしたいです。

この“ステイホーム”期間中に、“24人の監督による在宅制作撮り下ろし映画”をYouTube上でリレー公開しました。その中で僕は、『HOUSE GUYS』というクレイアニメを初めて作りました。でもこの話も遡れば、レゴブロックにカメラを向けていた経験が大きかったです。なのでその土壌のようなものは自分の中にありました。今回の“自粛期間”が、自分をある種そこに立ち返らせてくれたなとも思います。清い心で制作できたものでした(笑)。

──とてもユニークな作品でした。参加した監督陣も良かったですね。現在の「SHINPA」について思うことなどありますか?

SHINPAは、そもそも明確なミッションを持たずしてはじまりました。根本にあるのは“映画を使って好きなことをやろう”ということです。生活のためにやっているわけでもないので、続けていく中で、新しく挑戦すべきことがその都度見つかればいいかなと思っています。ただ、こうして監督たちが集まって、賛同してくれる人たちがいるのは、とても嬉しいです。

──ある種、明確な目的意識がないからこその面白さ、監督たちの集まりやすさもあるんですかね?

それはあると思います。僕たちの中で大きな目的意識など……いや、今回のリレー公開することで立ち上がってくるもの、見えてくるものはあるかと思います。「SHINPA」のもともとの始まりは、2014年に「北池袋 新生館シアター」という劇場でのことなのですが、今でも親交のあるの方が、ここで僕の特集上映を組みたいと提案してくださいました。僕はなんとなく「特集上映じゃなくて僕の友達の監督の作品を集めた上映会にするのはどうですか?」と言ったらそうなって14人くらいの監督の短編作品を一日かけて上映することになりました。そして、名前は何にしようかという話しになり、僕が「ジャパニーズ・ヌーヴェル・ヴァーグ」と言ったら、当時親交があった藤井道人監督が、「長いよ。じゃあ“SHINPA=新しい波”でいいじゃん」と。いざ開催してみたら、すごくたくさんのお客さんが来てくれました。それで2回目も開催することになり、その後「LOFT9 Shibuya」ができたら、そこで3回目の「SHINPA」開催。毎回お客さんが来てくれて、年越しイベントをやったり。そんな流れで、東京国際映画祭でも開催したり。明確な目的意識があったら、こんなに続かなかったと思います。そして今に至り、今回在宅映画24本をリレー公開しました。

──二宮監督にとって、映画作りにおけるチャレンジとはどんなものがありますか?

同じことをしないように心がけています。食事とかとも通ずる部分があると思うんですが、「基本的にはイタリア料理が好きだけど、たまには中華料理を食べたいよね」だとか。「『リミスリ』と『チワワちゃん』って似てるよね」と言われことも多いのですが、そこはどこか近いジャンルの料理だったのかもしれません。絶対に食べたくないもの、行きたくないお店があるように、絶対に撮りたくない作品もあります。でもいつか、それがただの食わず嫌いで、食べたくなる日が、撮りたくなる日がくるかもしれません。年齢を重ねて太りやすくなって、避ける食べ物が出てくるように、逆に撮らなくなるものも出てくるかと思います。

──この環境下で、撮影はなかなか難しいかと思います。二宮監督としては、満足のいく撮影環境が整うのを待ちますか? それとも、この環境下で撮れるものを撮っていきますか?

それは監督としてのスタイルより、取り組んでいる作品がどういう作品なのかということが重要なのではないでしょうか?例えば、江戸時代の花魁の映画を企画していたのに、「コロナのリスクもあるので濡れ場はやめましょう」と言われたら、もうその映画は撮れないかもしれないですし現場など、ただ早く再開すればいいというものでもないと思うので、より良いかたちで再開するための方法を、恐らくみんな考えていると思いますよ。

二宮健監督の作品