Profile

小路紘史
1986年生まれ、広島県出身。
東京フィルムセンター映画・俳優専門学校卒業後、短編映画を数本制作した後に長編「ケンとカズ」を制作する。「ケンとカズ」は日本国内の映画祭で数々の賞を受賞する。テレビ東京「GIVER」第5話と第9話で、テレビドラマでの監督を経験。
受賞歴
■短編映画■
「23話目」(2008)
〇リオデジャネイロ国際映画祭2008
〇ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2008
「海の見える場所」(2010)
〇ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2010
「ケンとカズ(短編版)」(2011)
〇ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2011
〇スキップシティ国際映画祭2011
〇ロッテルダム国際映画祭2011
〇リスボン国際インデペンデント映画祭2011
〇Nippon connection 2011
■長編映画■
「ケンとカズ」(2016)
〇東京国際映画祭日本映画スプラッシュ作品賞
〇日本映画監督協会新人賞
〇新藤兼人賞 銀賞
〇日本映画プロフェッショナル大賞 新人監督賞
〇日本映画批評家大賞 新人監督賞
〇高崎映画祭 新進監督新人賞
〇大阪シネマフェスティバル ワイルドバンチ賞
Close Up
監督の魅力に迫るQ&A
Q. 映画制作をはじめたきっかけは?
最初は大きな志とかはなく高校卒業して東京フィルムセンター映画俳優専門学校という映像専門学校に入って、映画を作っていくうちに映画監督になろうと決めました。ですので映画の専門学校に入っての出会いが大きかったように思います。
Q.影響を受けた作品、監督は?
小さい頃から沢山の映画を見て数えきれないほど影響を受けたのですが、中でもやはり スピルバーグ、ゼメキス、ノーラン、ビルヌーブ、フィンチャー、イーストウッド、タランティーノのように作りたい映画を高いレベルで作っている監督やそんな監督作に影響受けてきた気がします。
日本では内田けんじ監督が一番好きす。
Q.注目している監督は?
おこがましいですが内田けんじ監督の映画は毎回楽しみにしています。
Q.関心のあるテーマは?
テーマから映画をあまり作らないのでパッと思い浮かばないですが、 ずっと恋愛映画を撮りたいと思っています。
Q.映画制作の過程で、チャレンジングと感じることは?
制作初期にもっている情熱を最後まで持ち続けることはチャレンジングな事だと思います。
どこかで折り合いをつけたり折れそうになる時に踏ん張れるかが大事な気がします。
Q.得意なジャンルは?
まだ制作本数が少ないので得意ジャンルはわからないのですが、恋愛映画、ホラー、ドラマはやってみたいです。
Q.監督業の面白さは?
やはり役者が脚本を超えて素晴らしい演技をした時は監督業の面白さだと思います。
Q.映画づくりでこだわっていることは?
基本的にどの部分もこだわりたいのですが、特にキャスティングはこだわりたいです。
2作目の『辰巳』はオーディションの期間は6ヶ月かかりました。
Q.インディペンデントという領域の魅力は?
自由度の高さと、面白くなるまで妥協せず終わらせない事ができるのが魅力です。
Q.死ぬ前に映画を一本見るとしたら、何を選びますか?
インターステラー
Q.映画を見る時に、何を期待しますか?
想像した展開からちょっとはみ出して最後は想像もつかない所に連れて行かれる感じを期待します。
Q.映画の中のキャラクターとして生きるとしたら、どの映画の誰がいいですか?
ボーンシリーズのジェイソンボーンになって無敵になって格闘と車を乗り回してみたいです。
Q.1年に一度だったり、数年に一度など定期的に必ず見る映画は?
ソーシャルネットワーク、インターステラー、ボーダーライン
Q.好きな食べ物は?
グミやポテトチップスみたいなお菓子です。
Q.趣味は?
もちろん映画を見る事と広島カープの試合を見る事が好きです。
Q.愛読書は?
ジェームズ・キャメロン 世界の終わりから未来を見つめる男
タイタニック―ジェームズ・キャメロンの世界
Q.邦洋問わず、お気に入りのスターは?
トム・ハーディ、ブラット・ピット
Q.居心地の良い場所はどこですか?
家か、いつも脚本を書くカフェが居心地が良いです
Q.インディペンデント映画を扱った動画配信サービスに寄せる期待
インディペンデント映画は自由度が高く、どういう枠組みにも括られていない反面、鑑賞出来る機会が限られています。そんなインディペンデント作品が専門に見られるのは初めての試みと思いますので本当に大きな希望と期待があります。だから沢山の人達に認知されて愛される配信サービスになってほしいと思います。
Interview
インタビュー・テキスト:小野寺系
──新作の『辰巳』の製作が佳境とのことですが……
いま映像素材を編集しています。昨年の9月から撮影していて、まだあと2、3シーン必要なんですけど、コロナの影響で中断してしまって……。状況を見て撮影が再開できたら、シーンを入れ込むだけにしておきたいなと思っています。
東京国際映画祭に出品できたらと思っていましたが、それも、状況を見てということで。前は日本映画スプラッシュ部門でしたけど、間に合うんだったら、今度はそれ以上を狙いたいですね。
──いま話せる範囲で、作品の内容や特徴をお聞きしてもよろしいでしょうか
かなりシンプルというか。家族を殺された少女が、辰巳という主人公の力を借りて復讐をするという……。『レオン』をイメージしてもらえばと思います。そういう、今回はある意味「ベタ」ともいえるジャンルに挑戦してみたくて、自分でストーリーを考えていったんです。
だから、物語そのものに特徴があるというよりは、出演者の個性や芝居だとか、撮影や編集の部分で『レオン』とは違うものになっているんじゃないかと思います。
──『ケンとカズ』も『辰巳』もオリジナル脚本ですが、書き方に変化はありましたか。
物語上で葛藤を作る、というところは同じです。『ケンとカズ』では、ケンや、ケンの恋人、カズの家庭の事情を詳細に書いていきました。実際には、完成した映画よりももっと長いストーリーがあって、撮影もしたんです。
でもそれを編集すると、2時間を超える長さになってしまって。それで映画祭の審査に落ちまくったんですよ。それでもう、ストーリーの進行に支障がないものは全部削るって決めて、削って削って93分にして。ようやく見てもらえる作品になったかなと。
その経験を経て、『辰巳』は無駄を出さないよう脚本段階からもっと計算しています。
──葛藤を描くには背景が必要で、それを説明するには尺が必要になりますよね。
上手い作り手だと、それを的確な描写で簡略化できるんでしょうけど、『ケンとカズ』では、それを脚本のなかで行おうとしたので、そこは自分でまだまだな部分だったなと思っています。
ただ、『辰巳』でも同じ課題はあります。辰巳が少女を守るのか、それと反対のものを取るのかという葛藤を描かなければならないので、撮影したらやっぱり長くなってしまって。ちょうど、いまの段階の編集版で2時間ぐらいにはなってきているんで、ここからどう短くしようかなと思ってるところです。
──主人公が極限的な選択を迫られる状況設定は、ハリウッドの娯楽映画のストーリーテリングに近い感じがします。
そうですね。日本映画も見てはいるんですけど、どうしても昔からハリウッド映画が好きで、ずっと見ていますし、参考にしているんです。
アメリカのテレビドラマも、いますごいことになってますよね。もう考え得るあらゆることを試して面白いものを出してくるみたいな感じで。最近はドラマもよく見ていて、参考にしているんですが、あらためてアメリカの脚本術というのはレベルが高いなと思います。
『辰巳』でも、事件をまず20分から30分あたりのポイントにおいて、1時間くらいのポイントで転換させるっていう、ハリウッド的な三幕構成を意識しています。でもとくに脚本術を勉強したっていうよりは、ハリウッド映画そのものを見て学んだということです。
『ケンとカズ』のときは余裕がなくて、そこまでテクニカルにはやれなかったですし、長編も初めてだったので、撮りたい部分を書いて、そのまま撮って、編集でかなり帳尻を合わせたっていう感じだったので。
──でも、それが良かった部分もありますよね。そこが『ケンとカズ』の斬新な印象を作り上げていたというか。
そうですね、荒削りだったかもしれないですけど、描きたいものが中心にあって、それを追っていって、ああいう質感のものができましたね。
『ケンとカズ』のとき、絵コンテをはじめは描いていたんですけど、現場で実現できないところもあって、途中からはそんなに使わなくなってしまいました。でも、今回の『辰巳』ではほぼ描いてるんですよ。クラウドファンディングで、ありがたいことに目標を達成できて、いま希望の3倍ぐらいの予算が集まってきているので、そういう余裕が出てきたという面もあります。
──『辰巳』は、もっと計算した娯楽路線なんですね。
今回、森田想さんが出演することになって、もうこの人しかいないっていうくらいにインスパイアされたこともあって、そこから僕の方でもかなり、キャラクターを活かしていく方にシフトして、エンタメに引き寄せられましたね。
娯楽作品に近づくというのはどんな感じなのかって、それをちょっと楽しんでいますし、そういった新しい試みをどう判断されるのかという部分では、こわさもあります。それによって『ケンとカズ』の評価も変わってくるかもしれないですし……。
──この先は、キラキラ映画なんかも撮ってみたいなと思います?
いいなあと思いますね……! 『君の膵臓を食べたい』とかも面白かったですし。そういうのにも挑戦したいと思ってるんですけど、いまの時点では、やっぱり暴力映画の話がきてしまいますよね(笑)。
──それは仕方ないですよね。個人的にも、やっぱり小路監督に暴力映画を撮ってもらいたいという願望があるので……。
自でも自分としても、まだまだ定まった方向性というのはないんですよ。本当は『マディソン郡の橋』みたいに、心にスッと入ってくるような映画を撮りたいという気持ちもあって。
『ケンとカズ』のときは、こういうジャンルのものを作れば、多くの人に見てもらえるだろうとか、関心を持ってもらえるだろうという気持ちもあって。もちろん自分自身もそういうジャンルが好きですが、そういう意味では計算していたところもありますね。
でも、そこは越えていきたいなと思っています。『辰巳』では、監督としての新しい可能性というのも、見てもらえたらと思います。