CINEMA DISCOVERIES

Profile

堤真矢

1986年生まれ。滋賀県出身。
学生時代より多くの長編・短編映画を制作。現在は東京を拠点にフリーランスで映像制作を行う傍ら「Tick Tack Movie」名義で自主映画監督として活動。脚本も自ら手がける。YouTube、ニコニコ動画で配信され人気を博した自主制作Webドラマ『現実拡張 スマホ仮面』シリーズ(2012-13)をはじめ、過去の短編・中編の多くをYouTubeチャンネル「Tick Tack Movie」にて公開中。ジャンルや時間軸を飛び越える構成と共感しやすいドラマを得意とし、「時間と人間をナナメに描く」映画の面白さを模索中。『パラレルワールド・シアター』は、大学卒業後初の長編映画作品となる。

Information

▼Twitter

http://twitter.com/ticktackmovie

▼公式HP

http://ticktackmovie.net

▼Tick Tack Movie STORE

https://ticktackmovie.stores.jp

※スペシャルコンテンツのオーディオコメンタリーが全編にわたって視聴できるBlu-ray版『パラレルワールド・シアター』は上記のSTOREからご購入いただけます。

Close Up
監督の魅力に迫るQ&A

Q. 映画制作をはじめたきっかけは?

中学生の時に「スター・ウォーズ エピソード1」を観に行ったことがきっかけで映画に興味を持ち、クラスや文化祭等で映画を作ろうとし始めたのが、自分の原点だと思います。

Q.関心のあるテーマは?

「時間と人間」みたいなことが根底にはある気はします。
また、自主制作で活動している自分が「本物の映画監督ではない」みたいなコンプレックスから「本物とは、偽物とは何か」「虚実の逆転」みたいな要素が好きだったこともありました。最近だと「物語」そのものについて、人間にとって物語って何だろう、みたいなことにも興味があります。

Q.映画制作の過程で、チャレンジングと感じることは?

これも自主制作ゆえの悩みですが、いかにして金銭的に困窮せずに作り続けていくか、すなわちどうやって収益化するか、というのはずっと考えていますが、なかなかうまくいきません。また、低予算で作らざるを得ないがゆえのチーム作りというか、お金が十分でない分、周りの方々に「気持ち」でいろんなことを補ってもらっている、そのことへの葛藤も常にあります。あとは自分自身映画ファンでもあるので、映画ファンとしての自分が理想とするクオリティに、作り手としての自分がなかなか到達できなくて悩むこともあります。

Q.得意なジャンルは?

さほど劇的ではないけど些細な人間関係のすれ違いとか、日常的な実感に根ざした人間模様を描くことは好きだし、多分得意だと思います。それをうまく、映画的な非日常とミックスしたものを作りたいなというのは、意識しています。

Q.監督業の面白さは?

チームワークというか、人と関わる中で自分の想像と違ったり、超えたものが出来上がっていくことかなと思います。
また、映像の中に「世界」を作れることも、醍醐味だと思います。例えそれが遥か彼方の銀河みたいな壮大なものでなく、些細な日常の世界であっても。

Q.映画づくりでこだわっていることは?

まだ仕事とは言えない、誰にも必要とされていない「自主」制作だからこそ、まずは楽しむこと。関わる人たちにとって不快な経験にならないようにすること。その上で、全力で良いものを作る。ストイックじゃなく聞こえるかもしれませんが。

Q.映画づくりで成し遂げたいことは?

マイペースにでも作り続けていられれば、それ自体がゴールなのかもとも思いますが、できることならその中で少しずつ、関わる人やお客さんの輪を大きくしていって、いつかは世界に届くもの、自分よりも長く世界に残るようなものを作れたら素晴らしいなと思います。

Q.映画とは?

時間を閉じ込めるもの。
繋がっていないのに、繋がっているように見えるもの。
存在していないのに、そこにあるように見えるもの。
偽物が本物に見えるもの。

Q.インディペンデントという領域の魅力は?

ダイレクトに作り手の思いを受け取れるもの、それゆえの激しさや切実さ、時には「ウェルメイドでなさ」や、綻びも含めて楽しめるものであることが魅力なのかなと思います。
僕自身は、普段観る映画が完全にメジャー志向なので、インディペンデントの良さを持ちつつ、メジャー的なエンタメ性(そんな風に分けられるものではないと思いますが)も感じられるものを作れたらいいなとは思っています。

Q.映画を見る時に、何を期待しますか?

楽しく2時間くらいを過ごせること、ですかね…?

Q.映画の中のキャラクターとして生きるとしたら、どの映画の誰がいいですか?

「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズで画面の端の方にいるホビットとかエルフとか、良さそうですよね。結局すぐ退屈するかもですが。

Q.1年に一度だったり、数年に一度など定期的に必ず見る映画は?

大晦日の夜に「スター・ウォーズ」を観始めて、デス・スター爆発の瞬間にぴったり新年を迎える、という遊びを数年に1回やります(笑)

Q.好きな食べ物は?

もつ鍋

Q.好きなスポーツは?

水泳

Q.生まれ変わったらどんな仕事をしている?

仕事しなくてもいい不老不死の未来のお金持ちになって、好きなだけ創作したいですね!!

Interview

インタビュー・テキスト:ヒナタカ

劇場と配信とのお客さんとの距離の違いを鑑みて、
そこは新たな付加価値を作っていく必要があるかもしれないですね

原体験は中学生の時の映画製作がポシャったこと

——何がきっかけで、映画監督を目指されたのですか。

監督を目指そうと思った原体験はいくつかあるんです。その1 つは『スター・ウォーズ』ですね。中学生のころに『エピソード1』が公開されていて、「スクリーンの向こうにどんな世界でも作り出せるんだ」ということにすごく魅力を感じたんです。
 もう1つは、同じく中学生の時にクラスで映画を作ろうとしたことです。僕が「思い出作りに映画を作ろう」と言い出して、最初はみんなも盛り上がって始まったのですが、中学生なので「誰が主役やるの?」とか、「部活があるのにいつ撮影するんだ?」とか、いろいろな問題があって、クラスをかき回すだけかき回して、結局ポシャったんですよ。今回の映画を作る時はそのことは意識していなかったのですが、今になって思えば“作品がポシャった体験”ということも作品に反映されているのかもしれません。

——確かに、「ポシャるかもしれない」という恐怖というか焦燥感は、映画の内容ともリンクしていますね。

それと、さっきも話していた『パラレルワールド・シアター』の劇中のセリフである「大人の文化祭って感じだね」に繋がる経験もありました。その次の年の中学3年生の時、生徒会で文化祭のための映画を作って、それはちゃんと完成したんです。夏休みにみんなで学校へ集まって、夜まで撮影して、職員室に戻ってきたら先生がお弁当を作ってくれていてっていう……それが、めちゃくちゃ楽しかったんです。だから、そもそも僕にとっての「映画を作りたい」は、「ずっとあの文化祭を続けていたい」なのかもしれないなと思ったりします。

——監督をずっとやられていてこれが面白いな、やっていて良かったなと思うところはありますか。

自分の空想の中にだけにあった世界を具現化していく中で、自分と思っていたのとは違う一面が見えてくるというのが面白いです。脚本を書いている時は文字でしかなかったものが、役者さんと出会ったり、それによってロケ地も変わったりで、実像を帯びてくるというか、自分でもわかっていなかった作品の一面が見えてくること、「このキャラクターってこういう人だったんだ」ってわかる瞬間もあるんです。そういうのは、頭の中だけで完結しない、いろいろな人の手を経て完結する映画という芸術形態ゆえの面白さではあるのかなあと思いますね。

映画製作者ならではの配信サービスのメリットとは

——配信で映画を観ることについて、どうお考えですか。やはり、“映画は映画館で観て欲しい派”でしょうか。

もちろん、劇場も配信もそれぞれの良さがあると思います。ただ、映画を作る側、上映する側としては、スケジューリングや「ある程度席が埋まってないと格好がつかない」など、いろいろなことを劇場でかける際に考えます。そういうところに心を割かなくてよくなる、その負担が軽減されるというのは、配信の大きなメリットですね。あとはやはり配信であると「月額料金払っているし、これでも観てみようかな」という気軽さがあるので、ハードルは低いですよね。

——インディーズ映画ですと、劇場数が限られてしまいますが、配信だとそういうこともないですしね。

こういうインディーズ映画では、舞台挨拶などの付加価値に魅力を感じて劇場に足を運んでいただける方もたくさんいらっしゃいます。その付加価値を取っ払って、作品だけを配信するだけで、劇場に通ってくれているお客さんが観てくれるのだろうか……とはどうしても考えます。劇場と配信とのお客さんとの距離の違いを鑑みて、そこは新たな付加価値を作っていく必要があるかもしれないですね。

インディーズ映画だからこそ打ち出せる作家性とは

——シネマディスカバリーズでは作家性のある、その人にしかできない作品を発信したいという意思があります。映画はいろんな題材を通して作り手のメッセージを込められたりするところもあると思うのですが、堤監督ご自身が伝えたいこと、表現したい世界のようなものがあれば、教えてください。

インディーズ映画の魅力として、良い意味での“ほころび”といいますか、“パッケージしきれていない感情”みたいなものがあると思うんです。自分にとってのそのほころびが何なのか、というのは自分ではっきりとはわからないですが、 “時間”と“人間”の関係みたいなものは、ひとつ自分にとってパーソナルなテーマかなとは思っています。僕は子供の頃から、「卒業したらみんなバラバラになっちゃう」「いつかはみんな死んでしまう」といった、変化に対する根本的な恐怖があって、それこそ中学生の時に映画を作ろうとした時も、そういう恐怖が「今、思い出に映画を作ろう」に繋がってたんだと思うんです。

——仲が良かった人ともいつかは離れ離れになっちゃう、というのは全ての人が感じる喪失感や恐れですものね。

カッコつけた言い方かもしれませんが、自分なりに作品を通して「今という時間」を記録することで、その恐怖に抗おうとしていた、そこに創作の原点があったと思います。卒業、失恋、チームの解散、もっと言えば直接的な死に対する恐怖……そうした不可逆な変化への向き合い方を、よく題材として描いている。それが自分の作家性なのかなとは思います。

——インディーズ映画だからこその魅力を打ち出すことも、ご自身の強い作家性に反映されていると思います。

僕が普段見る映画は、インディーズ映画よりも、IMAX 3Dで観るような大作映画が多いんですよ。今でも一番好きな映画は『スター・ウォーズ』ですし、『スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け』も6回くらい観ていたりするので、メジャー志向なところもあると思います。あとは、本作で現実世界と平行世界を交差させたような、時間軸がバラバラになってたり“時間”をギミックっぽく使う作品、それこそクリストファー・ノーラン監督作とかも好きです。まあ、これは予想通りの回答だと思いますけど。

——いえ、予想通りではないですよ(笑)。クリストファー・ノーラン監督に影響も受けてるっていうことでよろしいでしょうか。

いいえ、影響は受けてないです(笑)。クリストファー・ノーラン監督に影響を受けているというのは、おこがましいというかちょっと気恥ずかしいです。好きですけどね。
 もちろん、クオリティー史上主義で考えてしまうと、そうしたハリウッド映画には絶対に勝てません。さらに今はNetflixで月1000円もかからずに『ストレンジャー・シングス』が観られる時代ですから、そもそもクオリティーの高いものを観たくて自主制作のインディーズ映画を観に来る人がいるんだろうかと、自虐的かもしれませんが、やはり思うことはあります。
 それでも、インディーズ映画らしい、サブカルチャー、アート系な作品というよりも、大衆に向けたものを作りたいという気持ちはあります。それは矛盾しているかもしれませんが、そういう矛盾も含めて“メジャーには行けないけどインディーズでやるしかない自分の立ち位置”も含めて、自分の作家性になっているのではないかなと思います。そこを上手く昇華する道筋というか、昇華できる題材で映画を作りたいということを考えていますね。

——次回作やこれからの展望などがあったら教えてください。

『パラレルワールド・シアター』で1つ映画を作れた、それこそ10年来の心の中にあったものをアウトプットできた、“未達成感”を乗り越えられたから、その勢いを止めたくないとも思う反面、今は「次に何をしたいんだろう」と、立ち止まって考えられる贅沢を少し味わってもいいのかなとも思います。
 もちろん機会があれば自主制作じゃない映画にもチャレンジしてみたいですが、そこに行くためのステップとしてしか自主制作を考えていないというわけでもありません。観る人を楽しませることを前提としつつ、やはり大人の文化祭のように、楽しく作り続けていきたいです。それこそ映画って言う形にこだわらなくてもいい、それこそ短編でもいいですし、それこそチャンスがあるなら連続ドラマもすごく興味あります。それこそインディーズ配信の連続ドラマを作っても面白いんじゃないかなとも思います。

——やりたい事は『パラレルワールド・シアター』でひとまずやり切ったということもあり、今は自由に次回作を考えられるという感じなんですね。

そうですね。僕は毎回、前回の反動で次の題材を選ぶようなところがあり、歳を重ねたということもありますので、次回は『パラレルワールド・シアター』とは正反対の映画を撮るかもしれないですし、自分自身というものを切り離したエンターテインメントを作ってみたいなという気持ちもあります。そこはワクワクしながら考えているところですね。

堤真矢監督の作品