CINEMA DISCOVERIES

演者たちの人生がそのまま作品内のキャラクターと一致しているように見える

文:ヒナタカ

 パラレルワールドとは、往々にして“こうでありたかったもう1つの世界”として描かれるものだ。今の自分とは違う人生を歩んだ自分の姿や、身近な人の異なる生き方を想像したことがある、という方は少なくないだろう。

しかし、言うまでもなく、現実にはそのようなパラレルワールドは存在しない、考えるだけムダなことなのかもしれない。そして、アラサーの売れない劇団員たちの日常を淡々を追いながらも、その“パラレルワールドが存在しない”事実を残酷に見せつけ、夢と現実の狭間で葛藤する人間の姿を慈しむように描いたのが、この『パラレルワールド・シアター』である。

主人公は30歳を目前に控え、劇団を立て直すため3年ぶりに大きな公演を打とうとしている男性だ。彼のところには昔なじみのメンバーが集まるが、それぞれが無邪気のまま売れない劇団を続けてはいけない、お金の問題や、パートナーとの結婚や将来の展望など、“オトナ”ならではの事情を抱えていた。彼らの関係性にある“噛み合わない歯車”を見せ続け、「いい年をして売れない劇団を何のために続けているんだろう……」と容赦無く自己批評しているシーンも多く、そのリアルさに胸が締め付けられる。

そして劇団員たちが練習を繰り返している公演の内容は、パラレルワールドを行き来する、時間旅行者たちの悲しい運命を描いたSF作品だ。その物語は、初めは理解できない、空虚なものとして映るかもしれない。しかし、劇中劇のパラレルワールドの設定は、売れない劇団員を続けている現実の彼らの姿を相対的に際立たせていく。つまり、「望んでいる自分になれない」「こうでありたかったもう1つの世界に行けない」といった、普遍的な“どうしようもない現実”の悩みを、劇中劇のパラレルワールドの設定により、鮮烈に映し出しているのだ。

一方で、本作では現実の悲劇を残酷に描きつつも、同時に彼らの“これからの未来”についても描いている。現実にパラレルワールドは存在しないが、未来は現実でも変えることができる。そして、その未来は現実のどうしようもない悲劇があってこその、切なくも愛おしく大切な“人生”そのものであると示すのだ。ここに、本作の最大の感動がある。

 そして、本作に出演する役者たちの姿が、売れない劇団員たちのキャラクターそのものに見えてくる、それぞれがこれ以上のないハマり役であるということも、とても大きな魅力だ。有名な人気俳優が出演するメジャー大作では、絶対にこのリアリティは出せない。インディーズ映画だからこそ成し得た、奇跡的な傑作だ。

特典映像 
オーディオ・コメンタリーからの抜粋

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