CINEMA DISCOVERIES

Special Features 田中俊介のDJ vol.3──対談前編

公開待機中の作品でコラボ済みの二人

田中:どうも、お久しぶりです! 僕が出演させていただいた阪元監督作『最強殺し屋伝説国岡』を撮ったのがもう一年前になるんですね。

阪元:その節はありがとうございました。その後、コロナで伸びちゃったんで・・・早く公開したいのですが。

田中:出来上がったものを見て、本当に爆笑だったんで。あんなに笑えるとは思わなかった。

阪元:あの時は「じゃ、なんかやってください」って無茶振りが多くて、失礼しました。最近はもう、あまりやらなくなってしまいましたね、その場で決めていくっていう演出は。商業映画では、乗ってくれる人は乗ってくれるんですが、逆にこうガチッと決めたい人は決めたいので。

田中:僕はあの雰囲気、大好きでしたね。すごく楽しかった。だからこそ、今回取り上げる『ファミリー⭐︎ウォーズ』(2018)も、俳優たちの楽しげな様子がありありと伝わってきましたし。

ハチャメチャなる奇人たちの大宴会

田中:ここ最近のツイッターを拝見すると、阪元監督は「鬼滅」にめちゃくちゃハマられているとか。そんな方がこの怪作『ファミリー⭐︎ウォーズ』を撮ったなんてギャップの甚だしいところではありますが(笑)。そもそもの着想のきっかけから伺ってもいいですか?

阪元:ある正月に、高齢者が幼児を車で跳ね飛ばした事件が立て続けに起こったんです。僕はそういうのを聞くと、道歩いてる時とかに車が突っ込んでくるんじゃないかって怖くてたまらなくなる性格で・・・。で、同じ頃、学生が一人暮らしのお年寄りに餅を配るという微笑ましいニュースもあった。これが2ちゃんねるで取り上げられ、そのコメント欄に「ジジイが若者を轢き殺すなら、俺たちは餅で殺そう。戦争の勃発だ!」というコメントを書いてる人がいて。ほんと不謹慎だって怒られるかもしれないですけど、「面白いこと書くやついるなあ」って思っちゃった。それを目にしたのがきっかけですね。

田中:ネットがきっかけというのは、この映画を理解する上で、ちょっと重要かもしれませんね。

阪元:ええ。俺は2ちゃんとかニコニコ動画で育ってて。小5くらいの時に「黒いドラえもん」とか、3、4分の「おもしろフラッシュ」とかをよく見ていて、まさにあのノリを映画にした感じかなって思います。あくまで後から自己分析してみた結果ですが。

田中:でも、本作はやりすぎなくらい残虐な描写でいっぱいだけど、なんか妙に清々しい。全員が円になって刃物で刺しまくるって、ああいう絵もちょっとシュールで面白いんですよ。あれをシリアスにやろうとは思わなかったんですか?

阪元:それについてはちょっとした転機がありました。まず、撮影の合間に、先行してあのポスターを作ってツイートしたら、4万回くらいリツイートされて。それで、なんかえらい、いろんな意見が出てきて。まずは不謹慎だと。

田中:百も承知ですよね。

阪元:不謹慎とか、面白そうとか。いろんな人が見ていて、面白がってくれてることが分かって。でもその時、我に返って「あれ?この人たちはこれから撮るあのグロい展開を本当に求めてるのかな」って思っちゃった。バズった投稿ではそんなグロいことまでは書いてませんでしたから。ただ餅を食わせて殺そうとするブラックコメディというだけで。

田中:それで、このバズった流れを大事にして、突き抜けちゃえ、と。

阪元:そうです。だからレンタル店で高校生が借りて、オールして、深夜に楽しめる映画になればいいなって。映画館の鑑賞体験も大事なんですけど、この映画はむしろそういうネットのノリに近いかも、って思ったんです。

悪人を描くこと、不謹慎を描くこと

田中:改めて拝見すると、ほんといい役者さんがたくさん出てるんですよね。おじいちゃん役も最高なんですが、他にも、松本卓也くん、いいっすね。映画の中の彼は、本当にやべえやつなんですよね。

阪元:あんま見たことないですよね、あの感じは。自然体な鬱陶しさというか。ああいう異様な役をいっぱいやって欲しいですよね。俊介さんはいかがですか。やばい役とか、人を殴る役とか。

田中:つい最近だと、ドラマの中でリンチに合いました。ヤクザの舎弟の役で、ボコボコにされるっていうシーンを撮って。それもやりがいありましたけど、逆に思いっきり暴れたいという願望もありますね。

阪元:昔はそういう役が多かった気がします。

田中:でもつい最近、ドラマでクズな彼氏役をやったんですよ。TBSの「この恋あたためますか」で森七菜ちゃんを罵倒して振るという彼氏を演じたんですけど、フィクションの中でクズ人間をやらせていただくのは本当に気持ちいいですね。もう番組が終わったらSNS上でめちゃくちゃ叩かれまくっていて。それは役者冥利に尽きるリアクションというか、大変嬉しくて、ありがたい。そんな役にもっと挑戦してみたいんですよね。いい人よりは、悪いやつをやりたいです。

阪元:僕も悪い人を描きたい。描き甲斐がありますから。

田中:悪人であれ、不謹慎な内容であれ、それが映画というエンタメの中で成立するのであれば、どんどん描いて、創造性の幅を広げていきたいですよね。

阪元:好き嫌いはあれど、どちらもあっていい要素ですよね。絶対。

田中:だから僕は、これからも臆することなく、どんどん不謹慎なものを撮ってもらいたい。阪元監督にはそういうオリジナルで唯一無二のものを生み出して欲しいです。
構成・文:牛津厚信

 

田中俊介
1990年愛知県生まれ。映画、舞台、ドラマなどで活躍中。主な映画出演作に『ダブルミンツ』 (内田英治監督)『ゼニガタ』(綾部真弥監督)、『恋のクレイジーロード』(白石晃士監督)、『デッドエンドの思い出』(チェ・ヒョンヨン監督)、『ミッドナイトスワン』(内田英治監督)『タイトル、拒絶』(山田佳奈監督)など。最新作は『恋するけだもの』(白石晃士監督)。


阪元裕吾
1996年生まれ大阪育ち。バイオレンスな映画ばかり撮っている。『ハングマンズ・ノット』『ファミリー☆ウォーズ』が代表作。クライムアクションの新作『ある用務員』が2021年1月に公開予定。