CINEMA DISCOVERIES

Special Features 田中俊介のDJ vol.3──オススメ映画紹介

このコーナーでは、俳優の田中俊介さんをナビゲート役に迎え、シネマディスカバリーズ配信作の中から毎月3本をピックアップ。田中さんならではの視点で作品の魅力を熱く語っていただきます。さらに後半では、田中さんが「この方に是非お会いしたい!」とリスペクトしてやまない映画人をお招きし、濃密なトークを展開。

みなさま、いかがお過ごしでしょうか、俳優の田中俊介です。2020年もいよいよ大詰めですね。

僕がナビゲートさせていただくD.J.も3回目。今回も前半はとっておきのオススメ映画3本を僕なりの視点でご紹介します。また後半では、平成の最後に解き放たれた怪作『ファミリー⭐︎ウォーズ』の坂元裕吾監督がゲストとしてご登場。新世代の奇才と呼ぶにふさわしい彼から、一体どんなお話を伺えるのでしょうか。最後までどうぞ気ままにお付き合いください!

あてどもないヒロインの感情が、街の狂騒とシンクロする

──『今夜、新宿で彼女は、』──

この作品でまず何よりも注目してほしいのは、山田佳奈監督の存在です。劇団「□字ック」の主宰でもある彼女は、舞台で活躍する一方、映像の世界でも精力的に活動されており、実は現在公開中の長編デビュー作『タイトル、拒絶』に僕、田中も出演させてもらっています。

そんな山田組の空気を体感した者として改めて思うのですが、この監督は、舞台と映像、それぞれの特質を見極めながら、そこでしか成し得ない可能性の限界をとことん追究していこうとされる方なんです。たとえば今作でいえばもう、新宿で撮るという企画だけでぶっ飛んでますよね。これほど許可を取るのが難しく、ごまかしの効かない街も他にないのではないか。あの過剰なまでのネオンとノイズと、肩が触れ合うほどの人混み。地べたからは、すえたような匂いすら香ってきそう。そんな眠らぬ街が放つダイナミズムを、一人の女性の心の動きと巧みにオーバーラップさせていくが手腕に惹きつけられます。

故郷から遠く離れ、この大都会で一人モヤモヤとイライラを募らせながら、見えない出口に向かって精一杯に手を伸ばす主人公。もろくて孤独なのに、どこか恐れ知らずで大胆不敵————。そんなアンビバレントな心理が表現できる、日本で唯一無二の場所が「新宿」なのでしょう。まさしく山田佳奈さんにしか撮ることのできなかった パワフルな魂を持った女性映画だと思います。

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世界で二人ぼっちの状況を痛感させる“あの瞳”に注目してほしい

──『イノセント15』──

透き通るような繊細さに包まれた映画でした。15歳と言うと、もはや子供でもなく、大人でもない。そんな自我がざわざわと揺れる微妙な時期。本作で主役を務める男女の中学生も、各々の家庭環境の中で誰にも打ち明けられない悩みを抱えながら、いつしか衝動的な逃避行を企てます。

その東京へ向かう電車の中で、男の子(萩原利久)が心地よい陽光に包まれ、つい眠ってしまうのですが、彼を見つめる女の子(小川紗良)の温かい眼差しが実に素晴らしい。そこには愛おしさや慈しみだけでなく、二人の旅がはじまったことへの高揚感や、その真逆の「もう引き返せない」という不安な気持ちなど、様々な思いが込められていました。そんな複雑にせめぎ合う感情が、あの瞳によってスッとひとすじの光のごとく胸に差し込んでくる。彼女の表情を受けて初めて僕らは、ああ、彼らは本当に、この広い世界で“二人ぼっち”の存在なんだ……という事実を痛感させられます。寡黙さが際立つ本作の中で、瞳が言葉以上のものを宿した瞬間だったと思います。

僕はヒロイン役の小川紗良さんと、ゲスの極み乙女。の「ドグマン」のMVで共演したことがあるのですが、そこでの彼女にも撮影中、何度となく吸い込まれそうになりましたし、やはりその瞳には格別の深みがありました。これからどんな表現者へ成長していかれるのか、本当に楽しみな方です。

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最大級カオスの中で光る、俳優たちの至福の表情がたまらない

──『ファミリー⭐︎ウォーズ』──

さて、年内ラストにご紹介するのは、来年1月にクライムアクションの新作『ある用務員』の公開が控える阪元裕吾監督による怪作です。幕開けはいたってファミリームービー然としているのですが、これが蓋を開けると、もう奇人だらけの大宴会。一つの出来事をきっかけに真逆のジャンルの底なし沼が口を開き、笑ってしまうくらいハイテンションなバイオレンスへと観る者を引きずり込んでいきます。

ある意味、実験的な作品ですし、撮影現場も相当な“産みの苦しみ”にさらされていたはず。それこそブラックな言葉や血しぶきが雨あられのように飛び交う状況は、戦場以外の何物でもなかったと思います。でも、それにもかかわらず本編中の俳優さんたちが本編中、至福感に満ちた“いい表情”を何度も浮かべるんです。

あれはきっと、監督が様々なアイディアを積極的に投げかけ、彼らと共により面白い可能性を探っていこうとする姿勢によるものではないでしょうか。それに、起用した一人一人に対して監督が「こんな面白い俳優がいるんですよ」と世に知らしめたい気持ちで一杯なのも、役者にとってこれほど嬉しいことはない。その固い共犯関係と相乗効果があって、あのなんとも言えない“いい表情”に繋がっていると思うんです。だからこそ、出来上がった作品は一見、収拾のつかないカオスなのに、その中身はジャンルを超越していて、斬新で、クリエイティブ。まったく、とんでもない新世代が現れたなと、興奮に身が震える思いがしますね。

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田中俊介のイチオシ!

  • 『今夜、新宿で彼女は、』
  • 『イノセント15』
  • 『ファミリー⭐︎ウォーズ』