CINEMA DISCOVERIES

Special Features 田中俊介のDJ vol.2──対談前編

はじまりは『ミッドナイトスワン』の話題から

田中:どうも初めまして! 僕はもうずっと小路さんにお会いしたくて、お会いしたくて。

小路:ありがとうございます! 光栄です。僕の方も、田中さんが出演されている『ミッドナイトスワン』を拝見したばかりで、いやあ素晴らしかったですね。大ヒットしているそうですし。

田中:おかげさまで多くの方にご覧いただき非常にありがたく思っています。監督の内田英治さんにはすごくお世話になっていて、僕が初主演した長編映画『ダブルミンツ』(17)も内田さんの作品でした。そこからのご縁でこうして『ミッドナイトスワン』でもお声をかけていただいて。

小路:内田さんには『ケンとカズ』の劇場公開時に応援してもらったんです。一度、現場を覗かせていただきたいなあ。どんな演出をされるんだろう。

田中:相手によって演出方法を変えるみたいですよ。僕に対しては事前の打ち合わせで細かいところまで指示していただいて。一方、撮影現場では、要所要所で近づいてきて、耳元でボソッと「内面な。そこだけ集中して」とか囁いてくれるんです。

小路:一言で簡潔に伝えるというのは、まるでイーストウッドの演出法みたいですね。

田中:ええ(笑)。それに一見、怖そうな顔してますけど、すごく優しい方ですし。

やっぱり、役者陣の面構えが最高ですね

田中:僕は『ケンとカズ』を劇場で拝見したんですが、全編ヒリヒリするような緊張感にあふれ、強い衝撃を受けたのを覚えています。「どうやったらこんな映画が生まれるんだ!?」ってすごく考えさせられました。

小路:そんなに褒めていただいて・・・ありがとうございます!

田中:長編第1作目ですよね。短編から始まったこの物語を長編化しようと思ったのはどうしてですか? こういった犯罪物がもともとお好きとか?

小路:ええ、犯罪物は大好きです。『レザボア・ドッグス』や『パルプ・フィクション』にもすごく影響を受けました。海外のノワールだったり、クライムサスペンスってすごくレベルが高いですよね。ああいう、男が「カッコイイ!」って思えるような映画を自分の手で作れたらなあって、ずっと思い続けていて。

田中:僕は主要キャストのカトウシンスケさん、毎熊克哉さん、藤原季節くん、それぞれと共演させていただいたことがあるんですが、とにかくお三方とも、面構えがいいじゃないですか。

小路:ほんと皆さん、顔がいい。

田中:毎熊さんも実際にお会いしてみると、「カズ」役みたいに殺気あふれた方じゃないですよね。

小路:めちゃくちゃ優しいナイスガイですもんね。

田中:僕も現場でお会いしてびっくりして。そこに衝撃を受けたので、まずキャスティングの経緯について伺ってもいいですか?

小路:毎熊克哉とは同じ広島の生まれで、僕が19歳で上京して映画の勉強をしてる時、彼も監督専攻だったんです。当初は交わりがなかったものの、2年目から一緒に作品を作る機会が増えていって。彼は監督のみならず、役者もやりたいという情熱を持っていたので、学生時代から僕の作品にちょいちょい出てくれていました。

そういう経緯があり、まずは短編版『ケンとカズ』を一緒に作ろうってことになって、その後、長編やるからまた一緒にやろうよって。彼のような気心知れた人が現場にいてくれたことは僕にとって心強かったですね。

田中:「ケン」役のカトウさんはオーディションで選ばれたんですね。

小路:そうです。脚本の重要なシーンを渡して、全力でやってもらいました。僕はいつもそうやって、俳優さんご自身がどれだけその役に近いのかをじっくり見させていただくことが多いですね。あ、でも、最新作『辰巳』の森田想ちゃんの場合は違いました。はじめ二十歳くらいの少年役を探していたんですが、なかなか見つからない。そこで森田さんのことは以前から知っていたので、試しにオーディションに来ていただきました。その結果、彼女のものすごい演技力を目の当たりにして、僕はそのままキャラクターの性別をガラッと変えて、出てもらうことに決めたんです。

田中:すごい!「この子を使いたい!」って強く感じたわけですか?

小路:そうですね、「いける」っていう確信が持てたんだと思います。なので、オーディションって一定の基準があるようで、実際は突発的にいろんなケースが生じるものなんですよね。

公開までの長い道のり

田中:最初の撮影がアップしてから公開までの道のりも長く険しいものだったそうですね。

小路:もう、丸3年くらい。映画祭で入選したら編集はやめようと思っていて、それまでずっと編集に編集を重ねていました。最終的に東京国際映画祭で入選を果たして(「日本映画スプラッシュ」部門作品賞を受賞)、そこでようやく公開の道筋が立って。

田中:それだけ編集作業が続くと、もうわけがわからなくなりませんか?

小路:なります、なります! ちょっと精神的に病んできますよね。パソコン作業なのでずっと自宅に閉じこもりきりですし・・・。田中さんは役者をやられている中で追い込まれることはありますか? いま、顔のラインとか、かなりシャープになられてますよね。

田中:あ、実はそうなんです。舞台で宮沢賢治の役をやらせていただいていたんですけど、その中で賢治の妹は亡くなるし、彼自身も死んでしまうし。死に際の場面があるので減量しましたが、やっぱり死と向き合うのって大変ですね。稽古期間を含めてもうずーーーっとそのことを考え続けるわけですから。

小路:何キロくらい落とされたんですか。

田中:7キロです。でも一番落としたのは内田監督の『ダブルミンツ』の時ですね。14、5キロ落としたかな。当時の僕はとにかく筋トレが大好きで、もうボディビルダーみたいな体をしていたんですが、そこからの急激な減量でもうガリガリになりましたね。

小路:実は僕、今まさに筋トレにハマってるんです。パーソナルを紹介されて、最初嫌だったんですけど、一回行ったらもうハマっちゃって。

田中:筋トレってやっぱ、心の健康を保つのにいいんですよね。心の不調を感じている人にお勧めするのはまず筋トレ。とにかくご飯を食べて、筋トレをしなさいと・・・って、まさか小路さんと筋トレの話で盛り上がるなんて予想してませんでした(笑)。
構成・文:牛津厚信

 

田中俊介
1990年愛知県生まれ。映画、舞台、ドラマなどで活躍中。主な映画出演作に『ダブルミンツ』 (内田英治監督)『ゼニガタ』(綾部真弥監督)、『恋のクレイジーロード』(白石晃士監督)、『デッドエンドの思い出』(チェ・ヒョンヨン監督)、『ミッドナイトスワン』(内田英治監督)『タイトル、拒絶』(山田佳奈監督)など。公開待機作に『恋するけだもの』(白石晃士監督)などがある。


小路紘史
1986年生まれ、広島県出身。 東京フィルムセンター映画・俳優専門学校卒業後、短編映画を数本制作した後に長編「ケンとカズ」を制作する。「ケンとカズ」は日本国内の映画祭で数々の賞を受賞する。テレビ東京「GIVER」第5話と第9話で、テレビドラマでの監督を経験。