CINEMA DISCOVERIES

Special Features 田中俊介のDJ vol.2──オススメ映画紹介

このコーナーでは、俳優の田中俊介さんをナビゲート役に迎え、シネマディスカバリーズ配信作の中から毎月3本をピックアップ。田中さんならではの視点で作品の魅力を熱く語っていただきます。さらに後半では、田中さんが「この方に是非お会いしたい!」とリスペクトしてやまない映画人をお招きし、濃密なトークを展開。

皆様、こんにちは! 一か月ぶりのご無沙汰となりました、俳優の田中俊介です。秋もだいぶ深まり、朝晩の冷え込みもだいぶ増してきましたが、お変わりなくお過ごしでしょうか?

さて、Discovery Journeyでは、今回も自信を持ってオススメする配信映画3本を、僕目線でじっくりとご紹介。さらに後半には小路紘史監督をゲストにお迎えして、日本映画界に突如現れたジャパニーズ・ノワールの傑作『ケンとカズ』にまつわるお話をいろいろと伺いたいと思います。果たしてどんな素敵な出会いと発見が待ち構えているのか。どうぞ最後までよろしくお付き合いください!

セリフ構成と言葉選びのセンスが黒光りする異色作

──『ウルフなシッシー』──

まず一本目にご紹介するのはこの作品。異色作、いや珍品と言ってしまっても良いのかもしれません。破局寸前の男女が織り成す“たった一晩”のワンルーム会話劇なのですが、主演ふたりのキャラクターがこじれ過ぎていて絶妙に面白いんです。

彼女の方はなかなか芽の出ない劇団女優で、年齢的な焦りを感じながらも半ば強引に自分を奮い立たせようとしている。一方の彼氏はというと、これが叩き上げのAV監督で口を開くとまあ全てがヘリクツだらけの現実主義者。そんなまるで“水と油”な男女だけれど、二人の巻き起こす“泥仕合い”は単なるそこらの口げんかとは全く違い、シニカルなセリフ構成と言葉選びの面白さがいっぱい詰まっています。

「芝居、興味深かったよ。懐石料理にミートソースぶっかけたみたいで」「常日頃あんたに使わない表情筋釣り上げていかないとね、プロとして」「我にかえったらおしまいだよ。ショウビズ界の人間が」こんな爆笑とまでは行かずとも、妙に引っかかるセリフ回しが湯水のように湧き出て、その言葉の魅力にどんどん引きずり込まれる自分がいました。そして実は、この超クセの強い彼氏役を演じる人物こそ、監督・脚本の大野大輔さん。演技の域をはるかに超えた存在感はもうまさしく“ヌシ”のよう。「この人、只者じゃない!」と感じさせてくれる一品です。

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二つの才能が衝突、反響、融合する様から目が離せない!

──『KOTOKO』──

塚本晋也監督というと、いつもご自分の作品の脚本、出演、編集、製作を一手に担われ、さらに完成後はその映画を携えて日本全国のミニシアターを回って舞台挨拶に立たれる————この強靭なまでの作品愛やバイタリティに僕はいつも敬服させられるばかりです。そんな監督が撮られた本作だからこそ、やはりとてつもなく凄まじいものがありました。

そもそも塚本さんが創り出す映像は、いつも何気ない日常で始まったかと思うと突如ボルテージが急上昇して、僕らに悪夢的なまでのイメージを突きつけます。血の描写、暴力性、轟音、銃声、鉄の匂い、叫び声・・・塚本ワールドをひとつ取っても危険な香りで満ちているのに、今回はさらに輪をかけて、アーティストでもあるCoccoさんの存在が激しく掛け合わされるわけです。

二人の天才が巻き起こすビッグ・バンは「混ぜるな危険!」のシールを貼りたくなるくらい衝撃的でした。シングルマザーの中でふくらんだ狂気がいつしか自傷や幻覚にまで発展していくこのギリギリの精神状態を、塚本さんがオブラードに包まずリミッターを解除して容赦なく映像化する。そうやってお互いの表現性が深く衝突、反響、融合し合う様は、僕らにとっても心臓が破裂しそうになるほどの緊張の連続です。きっと固い信頼関係に結ばれていた彼らだからこそ、あそこまで剥き出しの心をスクリーンに焼き付けることができたのでしょう。覚悟してみていただきたい秀作です。

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日本映画界に新星現る!という興奮がひしひしと

──『ケンとカズ』──

ラストを飾るのは“ジャパニーズ・ノワール”の新たな可能性を感じさせるこの映画。ノワールといえば、もうずっと韓国の勢いが計り知れないわけですが、日本ではそれに匹敵するくらいの作品がなかなか現れないなと悔しく思っていた矢先、僕は本作が醸し出す覇気に「ガツン!」と衝撃を受けました。

物語に奥行きをもたらしているのは間違いなくキャラクター像です。彼らは単なるステレオタイプの悪人なんかじゃない。ケンは恋人が妊娠し人生の決断を迫られていて、カズは実家の母親が認知症を患って生活が困難になりつつある。悪友として長年つるんできた二人は、互いに相棒を見捨てるのか、それとも何とかして絶望から救い出そうと手を伸ばすのか、まさに究極の決断を余儀なくされていくわけです。

かつて70、80年代の邦画にあったヒリヒリと焼け付くような緊張感がここにはある。魂の激しいぶつかり合いがある。フィジカルな痛みと悲しみと、それを超えた二人にしか築くことのできない関係性の境地がある——。初長編、しかもオリジナルでこれほどの渾身作を作り上げた小路監督、本当に底知れない可能性を秘めた方だなと思いました。これから活躍の場を広げ、日本映画を牽引していかれること間違いなし。その最初の発火点として、しっかりと胸に刻んでおきたい一作です。

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田中俊介のイチオシ!

  • 『ウルフなシッシー』
  • 『KOTOKO』
  • 『ケンとカズ』