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Special Features 女性監督特集

新たな“視点”を持った新鋭監督が急増中! 5人の新星をピックアップ

文:SYO

『ノマドランド』のクロエ・ジャオ、『はちどり』のキム・ボラ、『フェアウェル』のルル・ワンら、女性の映画監督の活躍が目覚ましい昨今の映画界。日本でも、放送中のドラマ『あのコの夢を見たんです。』で大九明子、瀬田なつき、枝優花、松本花奈といった監督が勢ぞろいするなど、女性クリエイターの勢いがますます増している。

シネマディスカバリーズでは、気鋭の女性監督たちが手掛けた作品を配信する特集企画がスタート。本稿では、5人の期待のクリエイターたちを、紹介していく。

1.穐山茉由
インターセックスの主人公が、女優を目指す『ギャルソンヌ-2つの性を持つ女-』が配信中の穐山監督。

彼女は、「友だちをレンタルする」という設定が目を引く2018年制作の長編映画『月極オトコトモダチ』で、第31回東京国際映画祭のMOOSIC LAB 2018 長編グランプリほか4冠に輝いた俊英だ。2020年には連作長編映画『蒲田前奏曲』内の短編映画『呑川ラプソディ』を手掛けた。

堅調に映画監督の道を進んでいる印象の穐山監督だが、もともとは「ファッション業界で会社員として働きながら、映画美学校にて映画制作を学んだ」という異色の経歴の持ち主。そのような経験が、彼女の映画作家としての“個性”を形作っているのかもしれない。

『ギャルソンヌ-2つの性を持つ女-』にせよ、LGBTQというテーマに取り組む中で、「女優として活動する主人公が、撮影現場で元カノと再会する」という劇的な展開を織り交ぜ、「映画として、どう見せていくか?」という作劇を追求している。

『ギャルソンヌ-2つの性を持つ女-』の視聴は こちら <-click! 

2.根岸里紗
2017年制作の『三つの朝』が、シネマディスカバリーズで配信中の根岸監督。ヴィンセント・ギャロやマーク・コズレックに影響を受けたという彼女は、映画作りのこだわりを「喫煙率80%」と語るなど、エッジーな感覚の持ち主。

『三つの朝』は20代・30代・40代という三世代の女性の生きざまを見つめた群像劇だが、人物描写やどこか退廃の香りが漂う刹那的な世界観など、作中からもそのソリッドな目線が垣間見える。画面の中に、常に乾いた“痛み”が漂っているのだ。

本人は、関心のあるテーマについて「語り損なわれたもの、抜け落ちたこと、留められなかったもの、言葉にならないものを無理やり言葉にあてはめてみること、存在する/しないことについて、ひとの無意識がすべてを暴く瞬間があること、お酒とたばこ」と語っており、他の監督と一線を画す独自の個性を今後どのように広げていくのか、気になるところだ。

『三つの朝』の視聴は こちら <-click! 

3.野本梢
2019年に制作された『次は何に生まれましょうか』が配信中の野本監督。「悔しい思いをしている人。ついつい驕り高ぶってしまう人」に関心があると語る彼女は、これまでに手掛けた作品で、社会からこぼれ落ちてしまった人々に、居場所を与えてきた。

『次は何に生まれましょうか』では、「シングルマザーの主人公が、他の子どもたちと違う娘とどう向き合うか」というシリアスなテーマに挑んでいるが、その目線は暖かく、孤独な人々を応援するような慈しみに満ちている。

「人を羨み生きてきた為、奥歯を噛み締めて生きる人たちにスポットを当てながら短編映画を中心に制作を続けている」と語るとおり、作品の端々から、人間愛を感じられる作り手といえるかもしれない。

野本監督自身、映画製作に対して「物事の見方を変えたり、吐き出せなかった思いに寄り添ったり、鼓舞したりするものでありたい」とつづっており、共感性の高い作品作りを得意としている。

『次は何に生まれましょうか』の視聴は こちら <-click! 

4.ふくだももこ
2015年制作の監督作『父の結婚』が配信中の、ふくだ監督。山戸結希監督によるオムニバス映画『21世紀の女の子』、商業映画『おいしい家族』『君が世界のはじまり』等々、彼女の名前を目にする機会は日に日に増しているのではないか。

「中学2年の頃『映画監督になる』と決めて、高校卒業後に日本映画学校に入学した」と振り返るふくだ監督。映画監督としてはもちろん、すばる文学賞佳作を受賞するなど、小説家としても活躍している。

女性、子ども、血縁関係、貧困、少年犯罪などに関心を抱いているというふくだ監督は、愛読書も西加奈子の「あおい」、寮美千子の「空が青いから白をえらんだのです: 奈良少年刑務所詩集」とセンスを感じさせるチョイス。

そんな彼女の監督作『父の結婚』は、『おいしい家族』の基となった短編作品だ。「実家に帰ったら、父が母になっていた」という斬新な設定を軸に、父と娘の和解を描いた。観る者を驚かせる仕掛けでハートを掴みつつ、中身はユーモラスで多幸感に満ちた“体温”のある内容に仕上げる手腕は、すでに熟練の域に達しているといっていい。

『父の結婚』の視聴は こちら <-click! 

5.山田佳奈
元レコード会社社員・舞台演出家・脚本家・俳優など、さまざまな肩書を持つ山田監督は、演劇での演出力のスキルアップを図るために映画制作にチャレンジし、それがきっかけに映画に目覚めたという。脚本で参加した『全裸監督』の内田英治監督がプロデュース、伊藤沙莉が主演を務めた⾧編デビュー作『タイトル、拒絶』の劇場公開を控え、注目度が高まっている。

山田監督の作品は、全力で生きるエネルギッシュな女性たちが特徴的だ。シネマディスカバリーズにて配信中の『今夜新宿で、彼女は、』は、元カレの家に押し掛ける女性の暴走を活写しているが、行き当たりばったりで失敗続きの主人公を観ていると、不思議と勇気がわいてくる。それは、生に真摯な山田監督のまなざしがあってこそだろう。

「監督業は、自分の思いを映画として表現できる。思い通りにならないことも含めて、自分に還元されるところが面白さだと思っています」と語る彼女の歩みは、きっとこの先も止まることがない。

『今夜新宿で、彼女は、』の視聴は こちら <-click! 

今回は、今後、日本映画界をけん引していくであろう女性監督たちを5人、紹介させていただいた。なお、シネマディスカバリーズでは、彼女たちのほかにも、まだまだ魅力的な女性監督たちが手掛けた作品を配信中!

『蒲田前奏曲』にも参加した安川有果監督、放送中のドラマ『あのコの夢を見たんです。』にも参加した枝優花監督や松本花奈監督、舞台にも活動の幅を広げる石橋夕帆監督、ミュージックビデオでも才気を発揮する亀山睦実監督、平岡香純監督などなど……。併せて観賞してみると、より深く日本の女性監督たちの知見が深まることだろう。ちなみに、10月16日に配信終了となってしまうが、三島有紀子監督の『幼な子われらに生まれ』もぜひチェックしてみてほしい。

今回は女性監督に絞った特集だが、現代の日本映画界は、性別や世代問わず、多くの映画監督が多様な“視点”を見せてくれるという、機運が高まってきている状態。新たな才能たちの台頭と躍進に、期待したい。

女性監督特集 企画会議 全編




   
  • 『ギャルソンヌ -2つの性を持つ女-』
  • 『三つの朝』
  • 『次は何に生まれましょうか』
  • 『父の結婚』
  • 『今夜新宿で、彼女は、』
  • 『Dressing Up』/安川有果監督
  • 『少女邂逅』/枝優花監督
  • 『脱脱脱脱17』/松本花奈監督
  • 『閃光』/石橋夕帆監督
  • 『ゆきおんなの夏』/亀山睦実監督
  • 『落書き色町』/平岡香純監督
  • 『幼な子われらに生まれ』/三島有紀子監督