CINEMA DISCOVERIES

Special Features 中野量太監督インタビュー VOL.1

「人間が、好き」。照れくさそうに、彼はそう言った

インタビュー・テキスト:SYO

映画監督・中野量太。2013年に『チチを撮りに』で脚光を浴びると、商業映画デビュー作『湯を沸かすほどの熱い愛』(16)が批評家・観客問わず絶賛され、一気に名を挙げる。蒼井優・竹内結子・松原智恵子・山﨑努が共演した『長いお別れ』(19)を経て、10月には妻夫木聡と二宮和也が兄弟を演じた『浅田家!』の公開が控えており、活躍するフィールドは順調に広がっている印象だ。

しかし、本人によればここに至るまでの道のりは決して平坦ではなかったという。中野監督はどのようにして、映画監督として成長していったのだろうか? シネマディスカバリーズで配信開始される『チチを撮りに』『沈まない三つの家』『お兄チャンは戦場に行った!?』の舞台裏も伺いつつ、これまでの軌跡を振り返る。

大学卒業後、映画学校に再入学

──本日はお忙しいなか、お時間をいただきありがとうございます。まずは中野監督のこれまでの歩みについて、教えてください。もともと、大学を卒業されてから日本映画学校に入りなおしているんですよね。

そうですね。実は僕、もともと映画少年でもなんでもなくて(苦笑)。大学時代はバンドやってたり、表現することは好きだったんですが、卒業後に自分が企業に就職するイメージが全くわかなかったんです。

じゃあ何をしたいんだろう?って考えたときに、やっぱり表現で人を喜ばせたいなと。じゃあ表現の最大は?と思ったときに、やっぱり映画じゃないかと思い至りました。友だちに「映画監督になる」って言ったら馬鹿にされましたけど(笑)。

──興味深い……! ちなみに中野監督の中で、映画を志すきっかけになった作品などはあるのでしょうか。

ちょうど僕が映画に触れてきた少年時代って、『E.T.』とか『スター・ウォーズ』にリアルタイムで触れられたんですよね。その印象が強くて、娯楽と言えば映画だ!というイメージがついていました。

ただ、先ほどもお話した通りシネフィルからは程遠かったので(笑)、大学3年生のころから映画を一生懸命観るようにしました。ただ、全然追いつかなくて。日本映画学校に入ったときが、ちょうど創立者の今村昌平監督が『うなぎ』(97)でカンヌ国際映画祭のパルムドールを獲ったタイミングだったんですが、校舎にでかでかと飾られた横断幕を見て「あ、今村監督の作品観たことない……すごい人なんだな」と思ったくらいのレベルでした。

でも、学校は楽しかったですね。3年生の時に撮った卒業作品『バンザイ人生まっ赤っ赤。』(00)で、最高賞の今村昌平賞をいただいたこともあって、すごく嬉しかった。「表現をして、人に喜んでもらう」というこの時期の経験が、今の自分の土台になっています。

最後の勝負をかけた作品で、一気にブレイク

──素敵なエピソードですね。着実に、夢に向かって進まれていったんですね。

ただ、その後は苦労しました(苦笑)。ちょうど僕の前年の卒業生が李相日監督で、卒業後一気に駆け上がっていったから、僕もその道を行けると思ってたんですよ。でも全然そんなことはなくて……。

卒業後、まずは助監督をやってみたんですが、全然気が利かなくて現場を途中でクビになるくらいで。その後、2年くらいで1回映画界からドロップアウトしてるんです。

──なんと。そうだったんですね……。

何とか映画の現場にしがみついたんですが、うまくいかなかったですね……。その後は、テレビ業界に移ってローカルの料理番組とか子ども番組を作っていました。でも、映画制作の楽しさが忘れられなくて。でもドロップアウトしちゃってるから、なかなか戻れない。

それでどうしたかというと、2005年ころに短編の自主映画を作ったんです。そこでも賞はいただけたんですが、なかなかプロの壁は越えられない。それでも何本か作ったんですが状況は変わらず、自分も40歳手前になって、どうしたらいいのか考えて考えて「この監督にお金を出して、映画を作ってもらおう」と思わせる作品を作るしかない、と決意しました。そのためには短編じゃダメ。長編でもちゃんとできるんだ、ということを示さないといけない。

そこで、自分が貯めた100万円を持って、当時お世話になっていた会社の社長に資金援助をお願いしたんです。その方ももともと映画畑の出身だったから乗ってくれて、僕としてはもう最後の勝負でした。それが、『チチを撮りに』(12)です。大学を卒業したのが2000年だから、12年経ってますね。

その後、出来上がった映画をどうしても劇場で公開したくて、色々掛け合ったんですが、配給会社も全然振り向いてくれなくて……。今でこそ自主映画も劇場公開してくれるようになりましたが、当時はまだそんな雰囲気ではなかったですね。

国内がダメなら海外だ!と思って色々映画祭に応募したんですが一向に引っかからず、「これ、まずいかも」とちょっとビビり始めて……。そんなときに「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2012」の存在を知って、「これだ!」と。この映画祭の何がすごいって、受賞作は劇場公開してくれるんです。

それで応募して、「国際」と名がつくだけあって様々な国の方が審査員だったのですが、その中の1人が『チチを撮りに』をすごく気に入ってくれまして。その方が国際セールス会社を紹介してくれて、いきなりベルリン国際映画祭で上映されることになったんです。僕が応募したときはまったく引っからなかったのに……(苦笑)。

その後、いわば“逆輸入”のような形で2013年、国内でも評価いただいて、という形です。

 

 

中野量太監督作品

  • 『チチを撮りに』
  • 『沈まない三つの家』
  • 『お兄チャンは戦場に行った!?』