ディスカバリー・ガイド
もがく人間を見る、まさに〝映画らしい〟喜びに満ちた作品
今をときめく白石和彌監督の長編処女作。原作ものの映画化が多く、脚本は脚本家が担当することも多い白石監督作品。
処女作はその監督の全てが出るというが、この作品では共同脚本も担当しているので、監督の表現したいものが素直に出ていると考えていいだろう。 セールスの仕事をし、知的障害をもつ兄・実生と暮らす幹生。性の処理に困る兄のために呼んだデリヘル嬢のマリンとだんだんと親しくなっていく。あらすじを見るだけで、嬉々として、また成り行きで、またやむなくの違いはあれど、犯罪に関わっていく人間を描く白石作品らしいヤバさが溢れている。犯罪に塗れ変化したり、その中でもがく人間を見る、まさに〝映画らしい〟喜びに満ちた作品である。
インフォメーション
タイトル:ロストパラダイス・イン・トーキョー
あらすじ
知的障害者である兄・実生と二人で暮らす幹生、性欲処理ができない兄のために、デリヘル嬢マリンを招き入れる。地下アイドルのファラとして活動しながら風俗で働くマリンには、いつか自分だけの島「ファラ・アイランド」を購入したいという夢があった。奇妙で穏やかな共同生活を始めた3人だったが、マリンの取材を続けるドキュメンタリー作家によって、互いを補うように生きてきた3人の絆がもろくも崩れ去ろうとしたとき、はじめて彼ら自分自身と向き合い、各々のやり方で圧倒的な世界と対峙するのだった......。
スタッフ・キャスト
監督:白石和彌
脚本:高橋泉
撮影 : 辻智彦
編集 : 加藤とみ
キャスト:小林且弥 内田慈 ウダタカキ 奥田瑛二
2009年/115分/ドラマ
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